12月の東京では、夢と現実のはざまを行き来するような体験型インスタレーション、フィンランドのサウナ哲学をひもとく企画、カムウェイ・フォンによるユーモアと温度に満ちたモフモフの世界など、ジャンルを横断するアート体験が揃います。寒い季節に心を温めてくれる、3つの「行って損なし」の展示を紹介します。
「Gallery A4」で、フィンランドを代表する建築家のアルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)が設計したサウナ6作品を中心に、フィンランドの精神が宿るサウナについて紹介する展示「フィンランド スピリット サウナ展 ―アルヴァ・アアルトも大切にした場所―」が開催されます。期間は2025年12月19日(金)から2026年3月5日(木)まで。
フィンランドの厳しい自然環境の中で培われたサウナ文化は、祝祭と日常生活の両方に深く根ざし、生活の中心として、そしてアイデンティティーの一部として息づいています。フィンランドの環境特性を重んじ、自然との共生を大切にしたアアルトにとって、サウナは神聖なる場、設計理念の中心となる場でした。
本展では、ムーラッツァロの実験住宅(コエタロ)のサウナ小屋のほか、彼の代表的な住宅のサウナや公共サウナを実寸模型や設計原図、写真などで紹介。またサウナの歴史、機能、そこから派生する暮らし文化の広がりに着目し、生活文化に欠かせないフィンランドの精神が宿るサウナとは何かを考えていきます。
次に紹介するのは、モフモフで自由気ままな猫たちを描き出すマレーシア出身の人気アーティスト、カムウェイ・フォン(Kamwei Fong)の個展「I don’t care what you think about it」。12月21日(日)まで、西麻布の「CALM & PUNK GALLERY」で開催中です。代表作「The Furry Thing」シリーズを中心に、フォンの世界観を象徴する動物たちの原画を展示します。
黒のミクロ顔料を用いた緻密な線描で、動物たちの毛並みや気配を巧みに描き出すフォン。モノトーンでありながら、静かなたたずまいの中に豊かな感情や意思を宿し、他者にとらわれず伸び伸びと生きる姿を表現しています。
本展では、展示空間に猫たちの視点をテーマにした遊び心ある配置を取り入れました。タイトル「I don’t care what you think about it(なんて思われても気にしない)」は、フォンが描く生き物たちのエゴ(自我)の感触から生まれた言葉。語り手となる動物たちは、気まぐれで「自分は自分」という揺るぎない態度を持っています。長年にわたって探求してきた線描による表現世界と、自由な動物たちの姿を間近で楽しんでください。
不思議な体験をしたいなら、冨安由真の個展「This Is Not A Dream」がおすすめです。1月25日(日)まで、「Gallery & Restaurant 舞台裏」で開催。冨安は、心霊や超常現象、夢など不可視なものや科学では解明されない事象に着目し、鑑賞者の心にざわめきをもたらすような作品を展開してきました。本展では、「夢」をキーワードとした長編物語の序章として構成され、夢と現実のはざまを行き来するような体験型インスタレーション作品を発表します。
とある食卓が広がっている会場。本来、食卓は家族に安らぎを与える象徴的な場所のように思えますが、冨安はこの空間にひとさじの違和感をもたらします。そして、鑑賞者にどこか奇妙で非現実的な居心地の悪さを感じさせるでしょう。
自分が夢を見ていることは分かっているのに目がさめてもまだ夢の中にいる、夢と現実が入り混じる不穏な混沌(こんとん)が、これから紡がれる物語の中に潜んでいます。会期中には、実際にこの食卓で食事をしながら鑑賞する参加型パフォーマンスの上演も実施予定です。物語に思いを馳せながら、冨安が作り出す不思議な世界をぜひ体験してください。
「東京、12月に行くべき無料のアート展11選」では、さらにアート展示を紹介しています。是非チェックしてみてください。
著者プロフィール:タイムアウト東京 編集部
タイムアウトは、1968年にロンドンで創刊され、現在は世界333都市59カ国、14言語で展開する国際的なシティガイドです。東京版「タイムアウト東京」は、日本のヒト・モノ・コトを独自の視点で取り上げ、日英バイリンガルで世界に魅力を発信。高いブランド力とグローバルネットワークを背景に、雑誌やウェブ、ガイドマップを展開。恵比寿には「タイムアウトカフェ&ダイナー」もオープンしています。
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