海外進出企業に学ぶこれからの戦い方
日本文化に根差した製品 ウォシュレットで真のグローバル企業へ転身できるか? TOTO(1/2 ページ)
日本食、アニメ、ゲームといった日本文化に深く根差した商品、サービスが徐々にグローバルに広がっており、そのトレンドをつかんで海外進出を進めている企業が多数存在する。そのような日本文化に根差した製品の1つに「温水洗浄便座」がある。1980年にウォシュレットを発売したTOTOは、言うまでもなくそのトップメーカーである。TOTOは、この日本文化に根差した製品を軸に真のグローバル企業へと転身できるであろうか?
TOTOの海外進出はかなり早く、1977年のインドネシアへの進出に始まる。現在は、欧米をはじめアジア、東欧、中東にまでビジネスを展開しているが、12年3月期の海外売上比率は残念ながら14%にも達していない。これだけ長期間取り組んでいて、全社売上の86%は国内で占めているのである。しかし、ここ数年海外への展開を積極化し、2017年度には全社売上高6000億円のうち海外売上比率を25%(1500億円)にする目標を掲げている。TOTOはウォシュレットを軸に真のグローバル企業になり得るであろうか?筆者なりの考察を加えてみたい。
TOTOの海外展開の現状を見てみると、地域によってその成否が明確に分かれるところが大きな特徴と言える。成功している市場は、中国(1979年進出)、インドネシア(1977年進出)、台湾(1987年進出)であり、2011年度の公表数値では、中国は売上高338億円、営業利益73億円、インドネシアは売上高118億円、営業利益26億円であり、台湾でもトップシェアを達成している。一方、1990年に進出した米国では売上高は149億円、営業損失6億円とかなり苦戦している。売上高の大きい中国と米国の5年間の売上高推移をみると、下表1のようになっている。
アジアでは順調に成長を続け、米国ではリーマンショック以降立ち直っていないことが一目瞭然だが、なぜこのような結果になっているのだろうか?
この要因を分析するために、まずウォシュレットが日本市場でどのように浸透していったかを見てみよう。TOTOがウォシュレットを上市したのは1980年だが、同社が洗浄便座を販売し始めたのは1964年にさかのぼる。米国のアメリカン・ビデ社の製品を輸入販売したのだが、技術的なトラブルも多く対応が悪かったため、同社はウォシュレットの開発に踏み切った。
ノズル位置の設計や温水の温度などの設定に多くの従業員の協力を得た開発ストーリーは、ドキュメンタリーにもなったのでご存じの方も多いと思う。一般的には、82年に著名なコピーライターである中畑貴志氏を起用して展開した「おしりだって洗ってほしい」のTVCMが有名だが、TOTOはそれまで日本市場で全く知られていなかった「温水洗浄便座」を浸透させるために、試行錯誤を繰り返しながらマーケティングスキームを構築していったのである。
市場が知らない商品、しかも当時は高価格商品であったため、まずは市場に「体験」してもらうことが最も重要だったといえる。そこで、TOTOはホテルやゴルフ場などの公共の場にウォシュレットを設置し、消費者に体験してもらうための施策を打った。ウォシュレットマップを作り、どこにウォシュレットが設置されているかを分かるようにし、できるだけ多くの人に体験してもらう取り組みを行っていった。
これと同時に、産婦人科医や痔の医師に効用を説明して回るなどの地道な活動も行った。TOTOは、これらのコミュニケーション戦略上の取組を行うと同時に、最も重要な施策である販売網の構築を行ったのである。当時、日本には5万社の水回り関連の工務店があったが、これらの工務店を販売代理店とすべく手厚いマージンを提供すると同時に、工務店にウォシュレットを無償で提供してファン化するなどの施策を実行した。
これは、当時もトイレでトップシェアを誇っていたTOTOだから短期間で実行できたともいえるが、ウォシュレットを市場に広めていくためには非常に重要なネットワークだったのである。TOTOは上記のような施策を試行錯誤しながら打っていったのであるが、これらが成功した要因は当時の社会環境にもある。以下のグラフ1を見て頂きたい。
ウォシュレットが上市された当時の日本は、正に下水道処理システムが浸透していく只中にあったのである。つまり、家庭のトイレが汲み取り式から水洗に、和式から洋式に変化していく時である。TOTOは、経済成長下におけるこのトレンドをつかんでウォシュレットを日本市場に普及させ、現在はシェア60%といわれている。普及に合わせてさまざまな製品改良を行っているのは言うまでもない。詳細は、同社HPのウォシュレット開発ストーリーを参照されたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
海外進出企業に学ぶこれからの戦い方
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
チェキの新製品、タッチパネル式大画面を初搭載 富士フイルムが2機種新発売へ
-
2
「対策している」と「守れている」は違う - 防御力を経営に見せる富士通のサイバーセキュリティ戦略
-
3
5年で辞める予定の元数学青年が「しなやかな心とぶれない軸」でCISOへ - 富士通 太田氏
-
4
「昆虫サイボーグ」で災害現地の行方不明者ゼロに挑む
-
5
なぜコーポレートITはコスト削減率が低いのか――既存産業を再定義することでDXを推進
-
6
貨物の搬送車両で自動運転「レベル4」 福岡空港、国内3カ所目
-
7
第55回:「誰が言ったか」で判断していないか──SNS時代、エグゼクティブに必要な「空気に逆らう力」
-
8
なぜ答えが揺れ、堂々と間違えるのか ―― 確率で動く生成AIの正体
-
9
パレスホテル箱根が2029年秋開業へ、国立公園内にマウンテンリゾート誕生
-
10
「話を聞いてもらえない」のは、内容のせいとは限らない――伝わる人が押さえる第一印象
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー