気鋭の経営者に聞く、組織マネジメントの流儀
企業理念に97.3%の社員が共感。その秘密は、負けない経営哲学と対話ベースのマネジメント(2/2 ページ)
マネジメントには「厳しさ」と「温かさ」のバランスが必要
中土井:フリューで実施された社員意識調査(2011年度)では、97.3%の社員が企業理念に共感との結果が出たそうですね。田坂さんのマネジメントのスタイルがこの数字に現れている気がします。
田坂:ここ2年くらいは、「やりたいことをやろう」と言っています。普通に考えると、社員それぞれがやりたいことをやる会社なんて、まとまらないですよね。でも、一人ひとりがやりたいことやる会社だという風に決めてしまうと、自分だけではなくて、一緒に働いている人たちもやりたいことをやるのだと認めなければならなくなる。そうすると、人を巻き込んで、本当にやりたいことをする人も出てきますし、巻き込まれた人もその状況を楽しめるような環境を作ることができるようになります。
マネジメントにおいても、トップダウンではなく、いろいろな人の意見をうまく融合しながら進めていくようにしています。社内での対話をベースに、信頼関係を築く風土が根付いています。マネジメントに必要なのは、バランスだと思います。リクルートの調査によると、成長する企業は「厳しさ」と「温かさ」のバランスが保たれているそうです。どちらかに偏ってしまうと成長できないということです。しっかり守るべきことと、大目に見てもいいことのバランスを保つからこそ、マネジメントは成り立つのだと思います。時期や案件によっても、そのバランスは変わるでしょうね。
中土井:事業拡大という上位概念があり、それを対話がベースのマネジメントで支えているというのがフリューのバランスなのかもしれませんね。フリューには、一人ひとりが意見を言える環境があるようです。そのような環境はどのようにして育まれたのでしょうか。
田坂:私自身が一体感を楽しんでいるからだと思います。ビジネスをしていると、失敗することもたくさんあります。でも、何かを達成したときには、メンバーで一緒に喜ぶことができます。難局を乗り越えるために、みんなで意見を出し合って、話し合ったりしているときは純粋におもしろい。一緒に何かやっているという感じが楽しいんです。
関係性が悪いと、仕事って全然楽しくないですよね。一緒に話し合うのが楽しい関係性を作ることができると、たとえ赤字だとしても事業を楽しめます。もちろん、数字が良ければ、なおさら楽しくなる。シンプルに楽しいことが好きなんです。
フリューのカラーは毎年塗り替えられる
中土井:大手の子会社から独立して、ここまで好業績を残せている会社はなかなかないと思います。何か秘訣があるのですか?
田坂:独立会社は、大企業の100%子会社とは財務の基盤の強さが全く違うので、独立後はやはり心配な気持ちがとても大きかったです。でも、独立してから今に至るまでに、だんだんと不安感がなくなってきたのを感じています。業績が上がったからでも、借入金の返済が進んだからでもなくて、漠然と「なんとかなる」という感覚になっているんです。昔だったら大騒ぎしていたような出来事でも、今はもう大騒ぎしなくなりました。他の5人の役員もそういう感覚になっているようです。
中土井:フリューという会社のカラーが定着しつつあるのかもしれないですね。
田坂:定着というよりも、むしろ毎年フリューのカラーが塗り替えられてきたように思います。フリューが勝手に成長してきたようなイメージです。今は、私よりも理念についてしっかり考えてくれる社員もいたりします。理念は私が作ったのですが、もう自分のものではなくなりました。
「法人格」というように、会社は人格を持っています。そこにいる社員、役員が相互に影響を与えながら法人格が形成されていきます。1人のカリスマが引っ張っていくものではないんですよね。人間は細胞に刻まれているDNAの総合体です。会社も同じように成り立っているのかもしれません。「こういう施策を取ったので、フリューができました」と一言で言えるものではなくて、その会社にいる人全員の影響を受けて成り立っているものです。
中土井:大企業のひとつのファンクションだった事業部が、そこから独立して独自のカラーを作り出し、成功しているのは改めて奇跡的なことだと思いました。
プロフィール
中土井 僚
オーセンティックワークス株式会社 代表取締役。
社団法人プレゼンシングインスティテュートコミュニティジャパン理事。書籍「U理論」の翻訳者であり、日本での第一人者でもある。「関係性から未来は生まれる」をテーマに、関係性危機を機会として集団内省を促し、組織の進化と事業転換を支援する事業を行っている。アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア株式会社)他2社を通じてビジネスプロセスリエンジニアリング、組織変革、人材開発領域におけるコンサルティング事業に携わり2005年に独立。約10年に渡り3000時間以上のパーソナル・ライフ・コーチ、ワークショップリーダーとしての活動を行うと共に、一部上場企業を中心にU理論をベースにしたエグゼクティブ・コーチング、組織変革実績を持つ。
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