話題の著者に聞いた“ベストセラーの原点”
「手のひらの音符」著者 藤岡陽子さん(2/3 ページ)
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誰もが強くは生きられない
――人間を観るまなざしの優しさが作品の大きな魅力になっていると思います。執筆時の「視線の高さ」について意識されていることはありますか?
藤岡:私自身は優しい人間ではなくて、むしろ厳しいと言われることの方が多いです。ただ、今作家をやりながら看護師として働いてもいるので、弱った人といいますか、しんどいと思っている人が周りに常にいる環境だということと無関係ではないのかもしれません。
この本の中にも、障がいや病気を持つ人が出てくるのですが、一生懸命それらを克服しようとしている人が日常的にたくさんいるというのが私が今生きている世界なんです。そこで、誰もが強くは生きられないということを日々見ていることが、おっしゃったような「視線の優しさ」につながっているのかもしれません。
――書いていて難しさを感じた箇所がありましたら教えていただければと思います。
藤岡:最初にお話しましたが、「“うねり”のある半生記」ということだったので、いつもはプロットを立てるのですが、今回はそうせずに書き始めました。その方が“うねり”が出るのではないかと思って。
――そうなんですか?すごく綿密に計画したうえで書かれている印象を受けました。
藤岡:「そう言って頂けて嬉しいですが、執筆は予想以上に苦労しました。最初に書き上げたものは自分の中で書きたいことのバランスがとれず、チグハグな感じになってしまったので、構成を組み直したりしたんですけど、その作業が難しかったです。あとは主人公の子ども時代の話が多いので、全体としてどうバランスを取るかというのも今までにはない難しさだったと思います。
――プロットなしで書き始めると、執筆にすごく時間がかかってしまいそうですね。
藤岡:書くのは半年くらいで書いたんですけど、そこから編集者さんとやり取りをして直していくのに一年弱かかりました。もう一回いちから考え直しますということもありましたし、もっと読者の方がおもしろく読んでくれるように直したいとわがままを言ったり、構成をもう一度考えたりということをやっていたら時間がかかってしまいました。苦戦しましたね。
――小説を書くうえで影響を受けた作家がいましたら教えていただければと思います。
藤岡:宮本輝さんの影響はあると思います。奇をてらわず、普通の人の普通の生活や、普通の人が今ある環境の中でがんばって生きていく姿を書かれているところがすごく好きなんです。高校時代から、宮本さんの小説に出てくる言葉にしたがって自分の進む道を決めたりもしていたくらいなので、人生全体に影響を受けていますね(笑) 。
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