ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
60代でしなければならないこと(1/2 ページ)
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「正しい」に、こだわらない
60代は、不安になります。不安になるのは、60代だけではありません。20代でも不安です。昔は、60代だけが感じていた不安を、全ての人が感じるようになっています。いわば「60代症候群」です。
この本は、60代だけに向けて書かれた本ではありません。全ての「60代症候群」の人に向けて書きました。
不安になる理由は、「正しい」にこだわるからです。「今までの正しい」を、定年で奪われる気がするからです。
60代はあらゆるものから解放される年齢です。究極は、正しいことからの解放です。
時々、「中谷さんの大ファンで、本は1000冊以上読んでいます。昔の本と最近の本では真逆のことを書いていますが、どっちが正しいのですか」という質問をされます。
これに対して、私は「どっちも間違っている」と答えます。「どっちも正しいのではないんですか」と聞かれますが、どっちも間違っているのです。
全ては仮説です。今、この本に書いていることも仮説です。
全てのストレスは、どちちが正しいかと考えることから起こります。これがつらいのです。「どっちも正しい」と言うと、大体の人が「またそんなことを言って」という顔をします。
「どっちも間違っている」という気持ちでいると、「正しい」にこだわるストレスから解放されるのです。
美術史の流れで言うと、日本絵画は、桃山時代に狩野永徳が大和絵の土佐派を吸収しました。スポンサーだった徳川幕府が天下をとったことで、狩野派は国の中心画壇に入ることになりました。本流にいると、「正しい」からはずれることができなくなるのです。
京都本社だった狩野派は、徳川家康について江戸に移って東京本社になりました。京都本社は京都支社に格下げになりました。京都支社に残った狩野山楽は、逆に自由でのびのびした絵を描くようになりました。
今日、世界で評価されているのは、江戸に移った本社よりも京都支社の狩野山楽の方です。
これを見ても「正しい」ことはしんどいことだと分かります。「正しいことはラク」という思い込みが、正しいことのしんどさを生み出しているのです。
例えば、占い師さんに「これから○○の出会いがあります」と言われました。ここで「それはいいことですか。悪いことですか」という質問をする人が多いのです。
今、目の前ではいいことでも、それが悪いことにつながることもあります。その悪いことが、結果としていいことにつながることもあるのです。「いいこと」と「悪いこと」という枠組みは、運命の中にはありません。客観的に、ただそれが起こっているというだけです。
50代までは、人間は全て優等生で、正しいことだけを追求してきました。60代で、やっと「正しい」から解放されます。「正しい」は十分にやってきたので、60代からの人生は「正しい」にこだわらずに生きていいのです。
だからといって、悪いことをすればいいということではありません。「正しい」から解放された向こう側に、もっと自由な広い世界があります。その世界に身をゆだねていけばいいのです。
道をはずれたところに、道がある
60代の不安は、定年で道をなくすという不安です。道にしがみつくと、ますます不安になります。
禅僧が描く「禅画」という絵のジャンルがあります。絵のプロではないので、のびのび自由に描いています。プロの画家は、みんな禅画に憧れていました。禅僧は長生きの人が多いのです。晩年になればなるほど、いい絵になります。死の間際に一番いい絵を描くのです。
禅の発想は、いかに自由になるかということです。本来、宗教は決まりごとや正しいことを突き詰めてきました。それと相反する世界に「禅」という考え方があるのです。間違えることを恐れないことが禅の精神です。
50代までは誰しも優等生で、「正解」とか「正しさ」を求めてきました。目に見えない「正しさ」の道がなんとなくあって、そこからはずれたところは道ではないと思い込んでいたのです。
実際は、道をはずれても、また道があります。道は無限にあるのです。それに気付くのが60代です。
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