3K、7K、24K「IT人材不評」の犯人はだれ?〜その1:生き残れない経営(3/3 ページ)
極端な例かもしれないが、IT人材不評の原因を説くひとつのヒントを示してみたい。
一方、IT人材の側の問題はどうか。
「あなた自身について」のアンケート調査(「人材白書」)によると、上述のごとくIT人材本人たちが将来のキャリアに不安を持っている割には、自分たちに甘く、客観情勢の把握に疎い。
「将来のキャリア目標を持っている」に対し、「当てはまる」が39.9%、「当てはまらない」が60.1%、「自分のキャリア目標は実現できると思う」に対し、「当てはまる」が37.5%、「当てはまらない」が62.5%であり、自分たち自身に随分甘い。
客観情勢に対する認識も甘い。「この産業で働く人材の仕事の内容は大きく変わる」が47.0%、「基本的には現在の延長」が53.0%、「企業で求める人材が大きく変わる」が46.2%、「基本的には現在の延長」が53.8%と、客観情勢の変化やIT人材の変革に疎いようだ。
客観情勢の認識に疎く、自分自身に甘い姿勢は、冒頭の「オタク」やり取りと無関係ではあるまい。敢えて言うなら、企業内のIT人材の実態として、どうしてもウチに籠りがちのIT人材は、昔のままのあり方を引きずってはいないか。
過去、IT技術革新は「ホストコンピュータ」から「クライアント&サービス」へ、そして「WEBコンピューティング」への2ステップを経験し、現在「クラウドコンピューティング時代」を思わせる動きにある。IT人材のあり方も、当然変化しなければならない。
しかし、「形」は依然として別空間に位置していたことを引きずり、「意識」は「教えて!goo」のように特別意識を持ち続け、「業務」は技術変化に無関係に、相変わらずシステム開発志向ではないのか。その結果、ITを取り巻く情勢の変化・技術進歩などに関心が薄く、ライン業務との意思疎通が不充分、業務知識に不足し、改革意識に欠けるのではないのか。
以上から考えて、「IT人材」を問うとき、経営者とIT人材本人たちの考え方・あり方を避けて通ることはできない。次回(その2)では、経営者とIT人材のあり方を考えたい。
著者プロフィール
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- タダ乗り経営者こそ、できることなら即刻クビにしたい
- “理想の上司像は?”は、冗談デショ
- “就活早期化是正”議論は相変わらずヒトゴト、日本が壊れる!
- 小6女児自殺事件に見る“顧客が求める満足感”でなく“わが社にできること”
- 放置されたタダ乗り迷惑社員をクビにできないか
- 製品の品質には企業の本音が表れる
- ドラッカーの真意と夢にまでうなされたプロフィットセンターの実態
- 組織外の情報こそ必要なのに内部情報にこだわる経営者
- 日本のCEOは状況を正しくみている? いや、ずれているだけではないか
- 「強い会社の秘訣」は「弱い日本の秘訣」の構図を見抜け
- 高校野球女子マネジャーにも劣る経営者たち
- 不毛な総論はもう結構、有効な方法論を示せ
「教育をするという企業風土」がB社の中にはない。口先で「部下を教育しろ」と叫ぶだけでなく、企業風土を根付かせるのがトップや経営者の責務である。 - 顧客第一なんて、企業が本当に考えられるのか
営利を目的とする企業が、果たしてすべてに優先して「顧客第一」を考えられるのか。本音の議論をしてみたい。 - 戦略および政策決定プロセスの怪
奇々怪々の戦略/政策決定プロセスが少なくない。どんなプロセスで経営戦略や経営政策が決定されていたのだろうかと訝らざるを得ない現象が幾つか起きている。 - 永遠のパラドックス「今どきの若者は……」に決着を
「今どきの若者は何を考えているか分からない」というのは、いつの時代も語られる。だが嘆く前に教育するのが経営者の義務である。 - トップにもの言えぬ社員――かつての軍部とよく似た会社
戦時中の日本海軍に関するドキュメンタリーを見ていて気が付いたことがある。それは、現在の企業に通じる事象があまりにも多かったことだ。 - 密室商法の現場に潜入、そこから学んだこと
駅前を歩いていたら主婦らを相手取ったたたき売りが行われていた。これはと思い店の中に入ってみると……。 - 辞めたホステスを部下に呼び出させる ヒラメ部長の愚行
にわかに信じがたいことだが、世の中には次々と愚かな行動をとる経営幹部が多数存在するのだ。まったく呆れ返ってしまう。 - 課題の本質が見えない経営陣――接待に明け暮れ給料払えず
企業が抱える課題を明確に理解せずに、見当違いな行動を取るトップがいるとは嘆かわしいことだ。彼ら自身が変わらない限り、その企業に未来はない。 - 「居眠り社長」が連絡会議で聞きたかったこと
ITベンダーとのやりとりの中で一番大切なのは、ユーザー企業ともども適度な緊張感を持って導入に臨むことだ。 - そもそも何かがおかしい――役員が社内で長時間PC麻雀
Web2.0、はたまた3.0という時代に社内のインターネットによる情報収集を禁止している企業が、まだまだある。禁止か開放か、時代錯誤さえ感じるテーマから見えてくるものは、やはり企業風土の持つ重みだ。 - 生き残れない経営:派遣・請負切りはドンドンやれ!
派遣社員や請負社員への依存体質を抜本的に見直すべきだと気付いた企業こそが未来を先取りできる。今こそ経営改革のチャンスなのだ。 - 生き残れない経営:「赤字を消すために人殺し以外は何でもやれ!」――経営現場にはびこる勘違い
アメリカから入ってきた成果至上主義が日本企業にまん延し、経営者やリーダーの号令の下、従業員は企業の理念を忘れ、利益に目を血走らせている。こうした企業が未来永劫生き残っていくのだろうか。