仕事を楽にし、戦略的に人生を生きるためのセルフマネジメント:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
現代という難しい時代に、ビジネスパーソンが能力を発揮するために欠かせないのが「セルフマネジメント力」だ。そこで求められるのは意志の力ではなく行動。
あなたは、「意志が強い自分に変わらなくてはいけない」と思っていないでしょうか。セルフマネジメントには意志の力が必要だと。だとしたら、その考え自体が、あなたのセルフマネジメントを失敗させているのです。
われわれ人間には、ほかの動物にはない「思考のクセ」があります。
人間の頭には、1日のうちに約7万回も、目の前の現実とは関係のない雑多な言葉が流れていると言われています。それは、言葉だと意識できるようなものもあれば、そうでないものもありますが、ほとんどがネガティブなものです。
1日に7万回もネガティブな言葉が頭を流れているために、われわれ人間はいたずらに過去を後悔したり未来に不安を感じたりすることになります。そして、勝手な思い込みをします。
「部長はきっと、オレのことを嫌っているに違いない」
「どうせまた失敗するに決まっている」
「私の意見などいつも無視されるんだから」
「なにか、嫌な結果になりそうな気がする」
などなど、まったく事実と異なる妄想を、日々、われわれは平気でつくりあげています。
このように、人間というものは、どうしたってネガティブになりがちなのですから、意志の力でなにかをしようと考えること自体、無理があるのです。
あなたにとってなによりも重要なことは、あてにならない自分の意志についてあれこれ考えることではなく、目の前にある現実の仕事に集中することです。それが、取引先との商談であっても、部下育成であっても、顧客からのクレーム対応であっても同様です。「気分の問題」と離れ、ネガティブな妄想を持ち込まずに、事実に即した対応をすればいいのです。
そのために必要なのは、つねに「現実」「今」に意識を戻すこと。過去や未来に飛んでは事実と異なる妄想に浸っている自分を、目の前の大事な現実に向き合わせることです。
それは、意志の力ではできません。「行動」こそが可能にします。行動といっても大げさなことではありません。例えば、右手をぎゅっと握りしめるとか、深呼吸をするといったことで充分です。
あるいは、あなたが、仕事に役立つ勉強をしたり、身体を鍛えるために運動を継続したいというような場面でも、求められるのは意志の力ではなく行動です。
「英語の勉強を本気でやるぞ!」と何度、自分を叱咤してみたところで、語学力は一つも高まりません。けれども、英単語を3つ覚えるという行動をとれば、確実にあなたは変わり始めるのです。
あなたは、リーダーとして高い業績を上げながら、周囲との円滑なコミュニケーションを図り、かつ自分自身を成長させたいと考えていることでしょう。
だとしたら、もう意志の力を鍛えようとしたり、ましてや部下たちにそれを求めたりするのは終わりにしましょう。
あなたは、あなたの望みをかなえる具体的行動をとるだけ。しかも、とてもハードルの低い簡単な行動をとるだけでいいのです。
小さな行動の価値に気づいたとき、あなたは揺るぎないセルフマネジメント力を手にしたと言えるでしょう。
著者プロフィール:石田 淳
行動科学(分析)マネジメントの第一人者。アメリカのビジネス界で大きな成果を上げる行動分析、行動心理を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジ、「行動科学マネジメント」として展開。精神論とは一切関係なく、行動に焦点をあてる科学的で実用的な手法は、企業経営者などから支持を集める。
組織活性化に悩む企業のコンサルティングをはじめ、セミナーや社内研修なども行い、ビジネス・教育の現場で活躍している。趣味はトライアスロンとマラソン。2012年4月、世界一過酷なマラソンといわれるサハラ砂漠250キロメートルマラソンに挑戦、完走を果たす。
『教える技術』(かんき出版)、『組織行動セーフティマネジメント』(ダイヤモンド社)、『組織が大きく変わる最高の報酬』(日本能率協会マネジメントセンター)、『挫けない力』(共著・清流出版)など著書多数。
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