映画の世界はノンフィクション?――ミッション・ポッシブルなサービス事例を一挙放映!:ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)
2020年に向け、社会インフラはどのように変化していくのだろうか? 決済、O2O、センサー技術など、国内外のエッジの効いたサービス事例を一挙に紹介。
どうなる2020年の社会インフラ
2020年に向け、社会インフラはどのように変化していくのだろうか。社会インフラの変化においては、「コミュニケーション」「インタフェース・イノベーション」「センサー市場の拡大」「ビッグデータの活用」の4つがキーワードになる。まずコミュニケーションでは、コカ・コーラがインドとパキスタンで展開した事例がある。
「インドとパキスタンの間には長く紛争があるが、コカ・コーラはICTを活用した自動販売機により両国の国民を"ハッピー"にした。この自動販売機には巨大なモニターが付いており、お互いの顔が見えるようになっている。それぞれの国にあるモニター上で同じしぐさをし、手を合わせるとコカ・コーラが出てくる。対立している人々をコミュニケーションによりハッピーにし、それをつないでいるのがコカ・コーラである。単なる広告を越えて人々に感動を与えることができた」(吉田氏)
またネスレでは、新商品を水槽に入れてコーヒー豆で埋め尽くし、ソーシャルメディアで「いいね」されるごとにコーヒー豆を1つずつ取り除くことで新商品を見ることができるキャンペーンを実施。利用者の共同作業により、コーヒー豆は1日でなくなった。吉田氏は、「既存の技術で新しい仕組みを生み出す"感性"が重要になる」と話す。
次にインタフェース・イノベーションだが、映画「M:i:III(ミッション・インポッシブル3)」に、コンタクトレンズ型のウェアラブルコンピュータを使うシーンが出てくる。これは映画の中のフィクションではない。コンタクトレンズ型のウェアラブルコンピュータは、2014年に商品化されている。Innovegaの「iOptik」システムである。
またGoogleGlassは、フレームにタッチするか、言葉により操作できる。外を見ると天気や外気温が表示され、言葉でメッセージを送信することもできる。外出すると経路情報が表示され、ライブのポスターを見ると、そのチケットを購入できる。書店に入り、「○○コーナーはどこ?」とつぶやくと書店のフロアマップが表示される。
さらに日本のベンチャー企業であるログバーが開発した指輪型のウェアラブル端末「Ring」は、指の動きにより、カーテンを開けたり、テレビをつけたり、メールを送信したり、お店で決済したりすることができる。Nymiもすでに商品化されているウェアラブル端末である。利用者の心臓の鼓動を登録し、その心拍で認証を行う技術である。
小型化、高性能化するセンサー技術
センサー市場の拡大だが、最近のセンサーは、小型化、高性能化により、さまざまな分野で活用されている。例えばLGは、ラスベガスの家電ショーでM2M(Machine to Machine)の家電を発表した。スマートフォンから、「冷蔵庫にビールは何本ある?」とテキストメッセージを送ると、冷蔵庫が「3本ある」とメッセージを返信する。
ビッグデータは過去のデータを解析するものだが、未来のデータを解析するサービスも過去にあった。グリーが展開していた「ランキン☆TV」は、東芝のDVDレコーダーであるレグザの録画予約情報をクラウド上でデータベース化し、未来の視聴率を分析することを可能にしていた。
さらに回転寿司チェーンのスシローでは、レーンを回るスシのデータをクラウドサービスに蓄積し、これを分析することで、廃棄率を75%削減した。これは来店客の性別、年齢層、入店から何分経過したかなどをクラウド上で分析し、レーンに回るスシの量を調節したことで実現している。
最後にBeaconは、「Bluetooth Low Energy(BLE)」と呼ばれる技術を使って、スマートフォンに情報を配信する仕組みである。例えばニベアでは、子どもの手につけるBeacon入りのリストバンドを海水浴に来た親子に配布。リストバンドを着けた子どもが30メートル以上離れると、親のスマートフォンに警告が出るサービスを展開した。
吉田氏は、「4時間の吉田劇場の内容を90分でお話したので、駆け足になったが、1つでも心に残るテーマがあれば幸いである。2020年以降の社会インフラを皆さんとともに、楽しく創っていきたいと思っている」と話し講演を終えた。
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