出世する人としない人の差は、微差であり、その微差こそが大差になる:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
成功する人やうまくやれる人は、成功し、うまくいくような原理原則に則って行動している。
試しに、1859年にイギリスで発行されたサミュエル・スマイルズの『自助論』(日本ではかつて『西国立志編』とも呼ばれていました)を読んでみるといいと思います。「天は自ら助くる者を助く」という序文が有名な本で、当時の欧米人300人以上の成功談を集めたものですが、150年以上も前の本にもかかわらず、今のビジネス書と通じるものが多く、成功するための原理原則は、古今東西、変わらないものだと改めて思い知らされます。
ビジネスの原理原則で、人との信頼関係を築くために大事なことを選ぶとすると、先にも書きましたが、「時間を守る」が挙げられます。
この「時間を守る」行為は、私たちの日常の中で何度も出てきます。「始業時間は○時○分から」「○時から会議が始まる」「○時のアポイントに伺います」「○時に集合してください」「○時に待ち合せね」「○分後に折り返しの電話をします」などなど、組織の中で働く場合、私たちは1日にかなりの数の時間の約束を交わしているはずです。
時間にルーズな人というのは、「あの人はいつも時間に遅れるね。どんな約束をしても守られたためしがないよ」と常に信頼を失う人であり、時間に厳格な人は、「あの人はどんな時でも時間を守る。いい加減なところが全くないよ」と誰からも信頼されます。
つまり、時間の約束という小さな積み重ねが、ほかのすべてにも通じているのです。
人事考課で能力を評価する場合に、S判定(非常に優れている)、A判定(優れている)、B判定(人並みに普通)、C判定(やや劣っている)、D判定(劣っている)というような段階評価を用いる企業が多いのですが、常にS判定の高評価を獲得できる人とD判定の烙印を押される人との差というのは、意外にもちょっとした差だったりします。
「何が何でも時間は守らなくては」と思う人と、「少しくらい時間に遅れたって構わない」と思う人との違いは、ちょっとした意識の違いですが、この差こそが評価の決定的な差につながってくるというわけで、「微差が大差」とは、まさにそういう意味なのです。
『出世する人、しない人の1ミリの差』(きこ書房)は、ホチキス止めのたった1ミリの差を引き合いに、評価される人とされない人の差を52のポイントで解き明かしています。
時間への意識と同様に、「1ミリでもキッチリ揃えなくては」と思う人と、「1ミリくらいどうでもいい」と思う人の、その1ミリの差こそが、すべての仕事に通じるということです。
S判定とD判定の分岐点は、ちょっとした差です。だからこそ、意識と行動を少し変えれば、D判定からS判定に一気にジャンプアップすることも不可能ではないのです。
著者プロフィール:田中和彦
株式会社プラネットファイブ 代表取締役
人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー
1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、リクルートに入社。人事課長、広報室課長、転職情報誌『週刊ビーイング』『就職ジャーナル』など、4誌の編集長を歴任。その後、ギャガ・コミュニケーションズで映画プロデューサー、キネマ旬報社/代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、"今までに2万人以上の面接を行ってきた"人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『42歳からのルール』(明日香出版社)など多数。
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