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AI時代のヒトの役割視点(2/2 ページ)

テクノロジーが大きく進化しAIやロボットに注目が集まる中、ヒトがどのような役割を果たすのだろうか。

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(5)ヒトはヒトだからこその役割に特化

 価値を実現するためにヒトだからこそできる機能、ヒトならではの強みを活かせる役割があるはずである。ヒトはそこに特化する。それにより、他のことはキカイに任せ、ヒトはヒトだからこその役割を果たす。そして、ヒトだからこそのスキルを磨くことに力を使っていく。

3、ヒトの役割

 では、ヒトがどのような役割を担うのか、ヒトだからこそできることを改めて考えてみたい。

(1)ゴールの設定(未来を描く・価値を定義する)

 何を実現したいのかゴールを決めるのはヒトの役割である。ゴールというのは、目指したい未来の姿を描くという意思を示すことであり、これまでに無い新しい価値を考えるというクリエイティビティ―を発揮することでもある。

(2)人をおもんぱかる・人の心を動かす

 人には感情がある。ビジネスにおいて人を相手にする限り、人の心をつかむ必要がある。人の心をつかむには、ヒトが大きな役割を果たす。例えば、温かみを与える、大切にされている感覚を与える、遊び心を加える、非合理性を楽しむ、間を読む、察する、共感を生む、などがそれにあたる。

(3)キカイのマネジメント

 キカイはヒトの指示に基づいて動く。ヒトの指示いかんでキカイのアウトプットは変わる。ヒトはキカイへの指示の仕方を分かっている必要があり、ヒトはキカイが今何をしているのか理解できることが必要である。そして、何よりも重要なのは、キカイを止めヒトに主導権を戻すのはヒトの役割である。

(4)判断(解釈・意思決定)

 何かを製造した時、分析した時、会社の方針を決める時、それぞれの場面で良い悪いの判断、左なのか右なのかの判断が成されるだろう。キカイはロジックに基づき解を出すが、判断するのはヒトの役割である。

(5)キカイのバックアップ

 キカイが得意なことはキカイの役割であるが、キカイが止まった時にクリティカルな状況に陥らないよう、必要最低限のことをヒトが代替できなくてはならない。

(6)知恵や技の伝承

 ヒトは長い年月をかけて知恵や技を蓄積し、ヒトからヒトへその知恵や技を伝承してきた。その知恵や技をキカイが学びキカイにより再現される時代が来ている。しかし、全てをキカイに任せ、キカイがなぜそのように動いているのかヒトが分からなくてもよいのだろうか。新しい未来を描き価値を定義するためにも、いろいろな判断をするためにも、ヒトに知恵や技が残り伝承されることが必要なのではないか。

4、経営が考えるべきこと

 テクノロジーの進化は、これまでの延長による成長ではなく、本質的に実現したい・提供したい価値を再定義し、それを実現する方法を考えていく契機となる。その時、ヒトをキカイで代替しヒトの役割を狭くするのではなく、より高い価値を実現するために、ヒトに何を求めるのか正しく役割を定めるべきではないか。

 ヒトだからこその役割に特化することで、ヒトは能力を最大限発揮し得るし、つまらない単純作業を行うより楽しく仕事ができる。そのような役割を果たし能力を発揮できる最適な環境を整えることで、企業の競争力向上へとつながるのではないか。ヒトが主導してうまくキカイを使いながら価値を創り出す、それが競争力を生むことにつながる。

著者プロフィール

山本和一(Waichi Yamamoto)

慶應義塾大学理工学研究科修士課程修了後、ローラン・ベルガーへ参画。自動車、航空の分野を中心に、中長期ロードマップ作成、事業戦略、販売・マーケティング戦略、ブランド戦略、コストマネジメントなど、多様なプロジェクトの経験を持つ。


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