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第16回:メンバーたちのやる気喪失の原因は上司にある! これを気付かせ、「学習性無力感」から脱出する方法マネジメント力を科学する(2/2 ページ)

マネジメント自体がメンバーのやる気を削ぐ行動をしてしまっているということに気付かせることが、まずなによりもやらなければならないことだが、幾つかの具体的方法を教えてもらった。

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 もう1つのやり方は、管理職の皆さんに松岡さんの著書『こうして社員は、やる気を失っていく』を読んでもらって、「うちの会社にあるものはピンクのふせん。自分の部署で起こっていることは黄色のふせん。両方のやつは黄色とピンクのふせん」を付けてきてもらい、それを元に「何が起きているの?」「なぜ起きているの?」を、マネジャー間で徹底的に話し合ってもらうというやり方です。

 ある会社では、全部にふせんが付いたとか(笑)。それは、「やる気を失わせる事象」が起こる背景があるからで、そこで自分たちの行動を振り返るだけでも、上司の皆さん自身や組織が変わります。

職場の「学習性無力感」を撲滅せよ

 立場が人を変えると言いますが、これまで紹介してきたようなことを通じて、特にメンバーたちについては視野や視座が変わるきっかけにもなります。課長がなぜそうした行動をしていたのか、部長はなぜそのような判断をしてきたのか。メンバーの立場では見えない、理解できないことが確かに多くあります。忖度するわけではなく、状況や背景、立場を理解することで、納得でき前向きに捉えるようになることも少なくありません。

 1つ、読者の皆さんにもやってもらえる取り組みとして、背景説明や共有にしっかりと時間を取ってコミュニケーションすること。それだけで「やる気を失う職場」から「やる気の出る、明るい職場」へとギアチェンジされることも多いのです。

 そもそも一般的な組織には、下は「上司任せ」、上は部下では「無理」と思う“負のスパイラル”=『学習性無力感』が蔓延していることが多いのです。

 それを断ち切るには、上司としては自分のイメージしたパーフェクトの仕事ではなくても、「あなたの仕事のここはいいよ」「ここはちょっと期待値じゃないな」「なぜそれをそのまま採用できないかというとこうだよ」を、多少面倒でも伝え続けることです。「あなたはきっとできる。それを期待している」と、伝え続けられる上司でないといけませんね。

 自分が管轄する事業や組織において、この双方の「学習性無力感」が起きていないかどうかは十分チェックする必要があります。

 松岡さんは言います。「みなさんは、全部署総ざらいとまでは言わないけれども、自社の中でそういうことが起こっている職場はないかを探してください。そこは本当に断ち切らないと、メンバーたちの「主体性」とか「当事者意識」はまったくなくなってしまいますからね」

 上司の姿勢、思考、行動が、職場のムードを作り、メンバーたちのやる気を上下させるのです。改めてその影響力の甚大さに、上司としては身も震える気持ちを持つべきだなと思います。

著者プロフィール:井上和幸

株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに

早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。


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