第17回:組織が社員のやる気を失わせる! 良い会社とダメな会社を見分けるには「社外規範」と「社内規範」をチェックせよ:マネジメント力を科学する(2/2 ページ)
理念に則ったことをしても評価されなくなり、逆に理念に則らないことをしたほうが評価される企業や組織では、理念は言葉だけになってしまい、社員のやる気は失われる。
良い会社の社員たちは、この両方を言葉にするケースが圧倒的に多いのです。
世の中に対してどんな価値を提供するか。そのために自分たちはどんな考え、行動でそれを実現するのか。この2つを必ずセットで話している会社は、目指すものも、それをどう実現するかも非常にクリアであり、結果として業績が上がっているはずです。
真の当事者意識はどこから生まれるか
松岡さんは、そもそも人が本気になって働くのは、社外規範と社内規範に共感・共鳴している時だけだと強調します。
「つまり、自分がやっていることが世の中のためにならないのではないかとか、世の中のためになっていると思えない時に、本気でのめり込めますか、ということですよね」(松岡さん)
本当の当事者意識があるのは、内発的モチベーションによって動くときです。
「「これをやったらお金をあげるよ」とか「課長にするよ」とか、外発的動機付けを一切使うなとは言いませんけど、それだけで動いている会社は、そこまでの会社ですよ」(松岡さん)
経営者JPはエグゼクティブサーチを主に提供していますが、転職相談で会う経営幹部には、常に「どうしていきたいですか?」「何をされたいですか?」とかなりしつこく聞いています。
本人のテーマや想いが強く存在していないと、マネジメントとしてしんどいことや面倒くさいことが起きたら(いつもそのようなことばかりのはずです。笑)、すぐにまた、「じゃあ転職」となってしまう。それだとまた次に行っても同じことを繰り返すことが、非常に多くあるのです。
松岡さんは、「だからそれぞれの人の中で、自社がやっている事業、うちの事業部がやっているビジネスは「社会の価値、社会のためになっているよな。これはいいことだよな」と思えたら、それはメンバーに伝わるんです。さっき井上さんが言ったとおり、苦しい時に乗り越えられるんです」と言います。その通りだと思います。
松岡さんはフリースブームが起きた時期からその反動で大きく減収をした時期のファーストリテイリング社で人事執行役員を務めました。
「この頃の急成長やその後の厳しい時期を乗り越えることができたのが、まさに、安くていい服があってもいいじゃないか、それを実現する、そのビジネスモデルを作るのが、われわれの仕事なんだという、その熱い燃えるような思いがあったから、いろんな逆風があっても乗り越えられた。そういう苦難を乗り越える原動力は、社外規範と社内規範の共感・共鳴だと思うんですよね」(松岡さん)
企業を強くし、逆境も乗り越えさせてくれる、成長を加速させてくれる原動力こそが、社外規範と社内規範、それを言語化したのが理念なのですね。
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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