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データドリブン経営には標準装備すべき仕組みとデータ活用のための体制づくりが不可欠――ITR浅利浩一氏ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(2/2 ページ)

DXを推進する多くの企業が、一貫性のあるデータを活用するデータドリブン経営を欠かせざる目標としている。そのためには、決別すべき従来の価値観や、逆に標準装備すべき仕組みもある。

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意思決定で最後に重要になるのは人間の経験であり、直感的な部分

 生成AI・AIを経営基盤として活用するために標準装備すべき仕組みとして、AIドリブン経営基盤が必要になる。AIドリブン経営基盤では、固定部分のMDM(マスタデータ管理)や変動部分の各種業務システムのデータを、Integration Hubを介してデータレイクに集約し、一貫性の高いファクトデータを作成。生成AIを組み込んだダッシュボードで分析することで、企業の意思決定力を飛躍的に向上させることが可能になる。そこでAIドリブン経営基盤においては、SoI(System of Insight)が強化すべきデータ基盤となる。


一貫性のあるデータ活用の実現で生成AIを最大限活用することが可能

 AIドリブン経営基盤を確立したら、その上に非財務、財務、IBP(Integrated Business Planning)による三位一体の経営基盤を構築する。浅利氏は、「まずは、計画、予算など、さまざまなプランニングをモニタリングできるIBPのような仕組みが必要です。また財務情報では一貫性のあるデータを活用して損益やスループット、付加価値、ROIC(Return On Invested Capital)など、さまざまな指標をきちんと分析できることが必要で、昨今では、サステナビリティに対応できる拡張性の高い非財務情報も重要になります」と話す。

 三位一体の経営基盤上で、データを活用していくための仕組みとしてERPを導入する場合、そのアプローチとして、業務をシステムに合わせアドオンを減らすFit & Gap、業務をシステムに合わせアドオンをなくすFit to Product Standard、業務にシステムを適応させ、必要なアドオンは利用するFit to Company Standard(Adapt to Standard)の3つがある。導入アプローチの選択について浅利氏は、次のように語る。

 「現在、Fit to Product Standardを推奨するベンダーが増えていますが、業種、および事業に特化した業務分野は、その全てを製品の標準機能で実現することは基本的には困難です。従って、そうした業務領域を対象とするERP導入では、製品を標準とするFit to Standardに依存するのは避けるべきであり、Adapt to Standardを採用するか、または併用していくべきです」

 SaaSで提供される最新のERPは、四半期に1度のインターバルで新しい機能がリリースされる。新機能により、これまでまったくできなかった作業が、非常に少ない労力で実現できるようになる機能もある。さらに生成AIを活用することで、一気にスキルの底上げも可能になる。しかし、いかにシステムが新しくなっても、意思決定において最後に重要になるのは人間の経験であり、直感的な部分である。

 「企業にとって重要なのは、生成AIを導入することではなく、生成AIでビジネスの課題を解決し、企業としてより高い付加価値を顧客に提供することです。そのためにはオペレーションの変革が不可欠であり、チェンジマネジメントが必要です。これまでの自社の強み、経験や直感的なものに左右される部分こそ、これまでのスキルを次の世代につなげていくためにもCoE(Center of Excellence)体制づくりが欠かせません」(浅利氏)

 講演の最後に浅利氏は、「今後2030年ごろまでは、基幹系システムはさまざまなアーキテクチャが混在する時代になります。そこでいかに部分最適、サイロ化を解消していくかが重要になります。こうした時代だからこそ、論理的に整合性のとれたシステムに刷新していくアーキテクチャマネジメントが重要になります。最後にデータが活用できるAIドリブンな経営基盤の上で三位一体の仕組みを構築し、さらに変革を推進できるCoE体制づくりが必要になると考えています」と提言して講演を終えた、

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