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単純に示すのが「禅」――無駄なものをそぎ落とすと最終的に本質が見えてくるITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

産業革命以降、人口は増え続け、工業化により生態系に深刻な影響が出るなどの変化が人類全体の課題となっている。この大転換期を東洋の知恵や禅のアプローチを通じて乗り越えるためのヒントを学ぶ。

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(3)対立や矛盾への向き合い方

 ビジネスでは、いろいろな場面で意見が対立したり、AかBか判断に迷うことがあるが、判断するときに東洋的な陰陽論がある。陰陽論は、陰と陽があって初めて1つのものが成り立つという考え方である。例えば、ものの輪郭を見るときに、光だけだと眩しくて見えないし、影だけだと暗くて見えない。光と影があることにより輪郭が見えるという、相反するものにより成り立つという考え方である。

 また呼吸も吐くと吸うという、相反する作用があって機能する。人間の脳も左脳の分析的なものと右脳の感性的なものがあって人間の脳として機能する。人生も苦があったり、楽があったりして味のある人生になる。こうした考え方は、2つだけど本当は1つである『二論的一元論』だ。

 吉田氏は、「企業経営も同じで、短期的な利益が大事、長期的な投資が大事と一見相反する考え方も、その上の持続的な経営に収まっていきます。課題との向き合い方として、陰と陽があって初めて1つが成り立という考え方はよいと思いますが、現実的に物事はAかBかを判断する場面があります。このとき1つに統合するという東洋的な考え方をもとにしながら、いわゆる『ヘーゲルの弁証法』のような西洋思想的アプローチで物事を判断することで、視座を高め、余裕を持って取り組むことができます」と話している。


短期的な利益と長期的な投資からその上の持続的な経営が生まれる

テーゼとアンチテーゼがあってジンテーゼがあるという「ヘーゲルの弁証法」から学ぶ

禅的リーダーシップを発揮するためにはどうすればよいか

 禅的リーダーシップを発揮するためにはどうすればよいのか。頭では分かっていても、腹落ちしないと実行できない。腹落ちさせるには、OSを調え東洋思想を学ぶことが必要になる。また座禅も自分を調える上でとても大事なトレーニングであり、アクティビティである。さらに、こうした方法を自分の中でルーティン化しながらリフレクトすることも重要になる。

 さらに自然での体験(リトリート)も、OSを調える上で重要な取り組みの1つ。自然から学ぶプログラムとして、まずお寺でプログラムの目的を聞き、何を望んでプログラムに参加したのかを簡単なオリエンテーションで共有し、座禅により静寂の中で自己と向き合う。次に、山登りによるサイレントウォークで歩く座禅を体験。157段の階段を、人生をイメージしながら一歩一歩登り、山頂に着くと自然を五感で感じながら瞑想する。

 ランチを食べたあと、展望台で上から見下ろして、自然に身を委ね、風の爽やかさや小鳥のさえずり、太陽の光などを体で感じ、呼吸を調えることで、すっきりとした感じを得る。最後の夜には、焚き火を囲みながら自然の中で感じたことを言葉にし、内省と共有をする。頭だけを使うのではなく、身体を使うので、出てくる言葉がポジティブになり、深い気づきを得た話になる。これにより、自分の考えていたことが腹落ちする。

 参加者からは、「いまここの重要性に気がついた。過去と未来ばかり気にしていた」「鳥の声、風の爽やかさなどの自然に触れて、小さいころを思い出した」「自然を身体全体で感じることができ、リフレッシュできた」などの声が聞かれたという。こうした参加者の声は、「清々しい」という言葉で表される。「清々しい」という漢字は、「さんずい」に「青」と書くが、青い水という本質を感じられる表現ということができ、まさに自然から学ぶことを実感することができる。

 「OSを調える方法に『禅ネイチャーピラミッド』があります。毎日のルーティンで、散歩をする、ゴミ拾いをする、座禅をする、空を見上げるなど、何か1つ自分自身を調えることをやり続け、月に1回は日帰りの山歩きをし、年に1回は1泊2日のリトリートを行い、数年に1回は圧倒的な大自然の中に身を置くことで自然に対する畏敬の念を感じることができます。日常生活に戻ると、時々この禅ネイチャーピラミッドを繰り返し、OSを調えることが大事です。こうしたプログラムを神奈川県の大磯、山梨県の西湖、鹿児島県の屋久島で行っているので、もし興味があればご参加ください」(吉田氏)


禅ネイチャーピラミッドを繰り返すことでOSを調える

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