三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時
【第7回】疲弊するIT部門(1)~殿様IT部門が変われない理由(1/2 ページ)
企業システムの基礎をつくった「匠」たち
一般企業へのコンピュータの導入は昭和30年代後半に始まった。私もその時代の様子は先輩の話で聞いたぐらいで、詳しくは知らない。そのころはコンピュータというよりも機械計算と表現する方がしっくりしたという。データとプログラムを読み込ませ、簡単な四則演算をする。簡単に言うと、電卓と印刷機が合体したような機械だった。
ハードウェアは非常に高価だったため、プログラムをいかにコンパクトにつくるか、データをいかに短くまとめ上げるか、エンジニアは限られたリソースを有効活用することに注力していた。私が入社した当時も、ストレージやメモリが高価だったことを覚えている。
当時のエンジニアは、1バイト、1ビットにこだわり、短い行数のプログラムで汎用的な処理をこなす芸術的なロジックをつくり上げてきた。このようにして企業の基幹システムを立ち上げて、育ててきたのが団塊の世代の方々である。
彼らにはその創意工夫を必要とされる時代がぴったりだったように思われる。昭和40年代前半につくられたプログラムロジックやシステムフロー、ファイル設計はまさに芸術品である。
私が一番すごいと思ったのが、ユーティリティプログラムだ。現場の要求に対して、その都度プログラム開発をしていたのでは時間が掛かり過ぎるし、プログラム開発にコンピュータを使える時間も限られている。そのころは、今からでは考えられないほど制約だらけの開発環境であった。
コンパイルは1日1回だけ、テストも1回、プログラムを修正するためには、紙テープやパンチカードに修正内容を打ち込まなければならない。このパンチマシンも会社に数台しかない。
しかも、データエントリーを専門に行っているパンチャーの休憩時間にパンチマシンを借りるしかない。だから、プログラムはひと月に2本開発できればよい方だった。そこで、個別にプログラム開発しなくてもユーザー要望に対応できるシステムができないかと考え出されたのがユーティリティプログラムである。
入社した当時、この技術を必死で覚えようとしたが結局全部は習得できないままである。そのプログラムには
SFILE:データ作成
SIR:データ抜き出し
SCOP:データコンペア
SFCNV:データ変換
SSRP:帳票作成
STAMP:突合せ
などがあったことは今でも覚えている。
これらは、JCLにパラメータを数行記述するだけで、簡単にマスターデータ更新やデータ抜き出し、帳票作成ができる。開発期間とコンピュータリソースを大幅に節約できる素晴らしいユーティリーティソフトである。今で言うパッケージソフトとまったく同じ発想である。しかも素晴らしく少ないメモリで動作する。
日本企業のシステム化の歴史や文化はこういう流れで始まり、現在に至っている。ハードが安価で高性能になり、高度な処理ができるパッケージソフトや高速ネットワークが当り前のように使える今の時代でも、企業のコンピュータシステム創成期のシステムづくりのこだわりや考え方、まさに気質というものがいまだに大きな影響を残していると強く感じる。
昔は企業のコンピュータ部門の中堅・ベテランの先輩は、業務の現場に対し威張っていた。
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