ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
リーダーシップ3.0――カリスマから支援者へ(2/2 ページ)
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
リーダーシップ3.0の要素と具体例
3.0の要素は以下の通りである。
―「自律した個人」の存在が大前提
―組織と個人、リーダーとフォロワーは対等
―リーダーの役割はいかに個々のメンバーとの「信頼」を築くか
―いかにして、一人ひとりのポテンシャルを引き出すか
―運命共同体ではないコミュニティー
―参画意志と力のあるものが、社内外を問わず集まる
―ネットワークにより情報はふんだんに得られる中で、社員はあえて、そこで働くことを選んでいる
支援者のリーダーシップとしては、サーバント・リーダーシップが有名である。しかし、逆に「サーバントに徹する」あまり、部下に投げたきり何もしない管理職層もいるが、それは勘違いである。リーダーである以上、時に組織の全面に立ってフォロワーを率いたり、一人ひとりに切り込んで行ったり、チームが泥沼の論争にならないように影響力を行使することは必要である。多くの学者やコンサルタントもこの型のリーダーシップの必要性をさまざまな呼称を用いて説明している。例えば、羊飼い型リーダーシップ、コミュニティーシップ、オープン・リーダーシップ、コラボレイティブ・リーダー、第五水準のリーダーシップなどである。
新しいリーダーシップにより企業を運営し成功を収め続けている多くの企業がある、例えば、HCLテクノロジーズ、ザ・リッツカールトン、SAS、サウスウエスト航空、資生堂、スターバックス、ホンダ、マッキンゼー・アンド・カンパニー、IDEO、セムコ社など。また、それは企業だけでなく、米国陸軍の変容や、日本の中で760年続いてきた永平寺にも認められるのである。
日本人はグローバル環境でリーダーシップを発揮できる
リーダーシップ2.0のチェンジ・リーダーは日本人にとって実は苦手なタイプであり、ごく限られた人以外は成功していない。一方、3.0のリーダーは、実は日本人にとっては得意な型である。
最後に、現在のグローバル環境でリーダーシップを発揮できる条件を持っているリーダー像である。
―宗教的な背景、人種的偏見がなく融通無碍
―メンバー全員に配慮し、我慢強く傾聴できる
―私利私欲に走ることなく無私に徹し、全体最適を優先することができる
よく指摘されるように日本人は、吸収力、変化対応力、多様性の受容があり、これだけ海外の文化を取り込みながら自国文化と融合し、文化、生活習慣を変化させながら生きてきた民族は希有である。また、真面目、親切、ていねい、他人・周囲への配慮、場の雰囲気を察することができる。
背景には、「お陰さまで」、「お天道様が見ている」、「世間様に申し訳ない」、「ご先祖様に顔向けができない」、「情けは人のためならず」という世界観、道徳観をもともと持っているということがある。「陰徳」(人が見ていないところで徳を積む)という言葉は、すでに日本でしか通用しないのではないだろうか。
また、茶道、華道、武道の中にも引き継がれている、互いを尊重し、気持ちよく場や時を共有する知恵や作法がある。
自然に対して人間が外部にいて、克服し、解明しようとしてきた西欧人にていして、人間も自然の一部であり(これは東洋思想)、自然を大切にし、その中で感謝しながら生活してきたのが日本人である。モノや資源を大切に無駄無く使おうという「もったいない」という発想が身に付いている。
これらの要素は、すべて3.0リーダーシップに求められる「自らの利益を追うのではなく、正しいことをする、地球に と ってよいことをする」という方向性と一致する。すなわち、2.0のリーダーが日本人には非常に少なかったが、3.0のリーダーには向いており、グローバル環境でリーダーシップを取るという観点において、日本にフォローの風が吹いているのである。
これらの 日本人の 美徳は今の若い人には忘れ去られている、という指摘もあるであろう。しかし、それは正しく教えておらず、練習していないからである。DNAの中に流れているものは、一旦教えられれば容易に受け入れ、身に付いて行くのである。ひとりでも多くのリーダー=自律した日本人、が育つことを願ってやまない。
著者プロフィール:小杉俊哉(こすぎ・としや)
早稲田大学法学部卒業。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院修士課程修了。NEC、マッキンゼー、ユニデン人事総務部長、アップル人事総務本部長を経て独立。その後、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授などを歴任し、現在は慶応義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、THS経営組織研究所代表社員。
専門は、人事・組織開発、キャリア・リーダーシップ開発。組織が活性化し、個人が元気によりよく生きるために、組織と個人の両面から支援している。
著書に『ラッキーな人の法則』(中経出版(同タイトルのDVDもレンタル中))、『ラッキーをつかみ取る技術』(光文社新書)、『組織に頼らず生きる』(平凡社新書)、『キャリア・コンピタンシー』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
富士通、新方式の量子コンピューター試作機を世界初開発 ダイヤモンドで計算精度を向上
-
2
「複雑さにあらがう“設計者たち”」――マネーフォワードに学ぶBizOpsの実践構造
-
3
会計思考が組織を変える――全社員がBS、PLを理解した風船会計メソッドとは
-
4
AI画像認識で検査効率化、技能継承やロボ自律制御にも活用へ 東芝総合研究所の落合誠所長
-
5
セキュリティは「使えてなんぼ」 認証との偶然の出会いから22年 - NTTデータ 星野氏
-
6
戦略を実行する第2ステップ―組織の成功循環モデルを知り、リーダーシップを強化する
-
7
ゴルフダイジェスト・オンライン 大日健COO
-
8
鷹は、自らの爪・羽根・くちばしを折ることで、生まれ変わる
-
9
フジテレビが「アドレッサブル広告」開発 商用化に向け技術実証加速
-
10
新幹線にスマホ10台! 説明前にまず自分で確かめる - Zimperium 成田氏
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー