視点

産業財×IoTによるマネタイズ・イノベーション(1/4 ページ)

 「モノづくり力だけでは勝てない」「手元資金はあるが有望な投資領域が見いだせない」、多くの産業財メーカーが抱える共通の悩みではないだろうか。

 昨今、どの産業でも、製品・サービス単体での競争優位性維持が困難になっており、モノとコトを組みあわせた複合的かつ抜本的なイノベーションが求められている。そのようなイノベーションを構想・具現化する上で、世界的なカネ余りとIoT技術の発展をチャンスと捉えることが重要だ。

 産業財メーカーがコト売りを実現するうえで、IoT技術がもたらすさまざまな見える化は、金融サービスを起点とした多元的な可能性を生み出す。実際にモノをつくっているからこそ、機械の状況把握、時価・減価の推定、サプライチェーン全体へのフィードバックなど、産業財メーカーならではの金融サービスを開発しうる。金融サービス提供の原資を確保する上で、世界的なカネ余りが追い風となり、自らの余剰資金を使うも、金融プレイヤーを味方につけるも、その選択肢が広がっている。

 使用価値をベースとした成果課金モデルや、減価・時価把握に基づく次世代型リース、稼働可視化による運転資金供与など、金融サービスを軸に新たなマネタイズ手段を実現できる環境は十分に整っている。あとは、モノづくり力で勝負してきた成功体験から脱却して、未来志向のパラダイムシフトを、いかに迅速かつ的確に行えるかだけだ。

1、世界的なカネ余りがもたらすビジネスチャンス

 世界的なカネ余りに歯止めがかからない。リーマンショックを契機とした世界的な金融緩和政策を受けて、民間セクターの資金が膨らみ続けている。日本経済新聞の集計によると、世界の上場企業が保有する手元資金は12兆ドルと、10年前から80%増加し、半数以上の企業が実質無借金経営となっているという。

 我が国の企業も全く同様だ。本来、さらなる成長の種まきをすべき時だが、さしたる有望投資対象が見当たらない企業があまりにもに多い。2016年度の国内リース取扱高(5兆円強)は、10年前の2006年度(約8兆円)に比べ3~4割も減少している。デジタル技術対応に後れを取らぬようCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の創設といった新たな動きも散見されるが、おおむねの余剰資金は、有利子負債の圧縮や自社株買いに回り、金融市場へ還流してしまう。

 他方、アセットファイナンス市場の成長に注目したい。商品・在庫など動産や売掛債権を担保とする国内ABL(Asset Backed Loan)残高は年々増加傾向にあり、航空機・船舶・コンテナなどを扱う日本型オペレーティングリース市場も急成長している。融資に近い性質を持つファイナンスリース市場が伸び悩む一方で、物件価格の全額を支払う必要のない(=残価が設定されている)オペレーティングリース市場は拡大基調にある。 (図A参照)

 すなわち、(1)企業の信用力・与信枠に影響を受けづらく、(2)残価設定により安価なアセット調達が可能で、(3)税メリットを得られる可能性もある、アセットファイナンスは資金の出し手・受け手双方に利があり、支持されていることを示している。特に、中古品でも資産価値が十分に存在する産業機械・輸送用機器・医療機器メーカーが、自ら金融サービス提供に乗り出せば、余剰資金を活用した新たな収益源を創出しうる可能性があるということだ。

印刷する
SNSでシェア

視点

この連載の記事をもっと見る

この記事の著者

五十嵐雅之
五十嵐雅之

ローランド・ベルガー プリンシパル 早稲田大学理工学部卒業、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(経営学修士)。米国系ITコンサルティングファーム、国内系コンサルティング・ファーム、三菱商事株式会社を経て、ローランド・ベルガーに参画総合商社、産業機械、公的機関およびサービス業などを中心に、事業戦略立案、新規事業開発、事業計画・投資評価、マーケティング戦略立案・実行支援、組織構造改革などのプロジェクト経験を豊富に持つ。

渡邉諒也
渡邉諒也

ローランド・ベルガー プロジェクトマネージャー 東京大学工学部卒業、東京大学大学院新領域創成科学研究科修了。米国系投資銀行を経て、ローランド・ベルガーに参画。 電機、自動車、金融機関など、幅広いクライアントにおいて、成長戦略、新規事業戦略、M&A、事業計画評価、コスト削減などのプロジェクト経験を豊富に持つ。

関連記事

ITmedia エグゼクテブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら

ぜひこの機会にお申し込みください。

入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。

入会条件:
上場企業および上場相当企業の課長職以上

※入会は無料です

エグゼクティブコンテンツ

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia エグゼクティブ SNS

X @itm_executiveをフォロー

インフォメーション

注目情報をチェック

ITmediaエグゼクティブをフォロー