視点

デジタル技術が拓く未病・予防医療の未来――新規ビジネスモデル構築とマネタイズの切り口(1/2 ページ)

※本稿は、ROLAND BERGER LIFE SCIENCE STUDY「デジタル技術が拓く未病・予防医療の未来」のサマリー版である。

1. 医療における「予防」の重要性の高まり

 日本を含む多くの先進国においては、政府支出に占める医療費の割合が年々増加傾向にあり、医療費抑制ニーズは高まる一方である。各国の平均寿命が依然として延伸傾向にあることを考えると、医療業界全体での医療費削減プレッシャーは今後も継続するであろう。

 斯様な状況下で、Payer(政府や保険会社などの医療保険提供者)が中心となって、これまで聖域であった医療の世界にも経済合理性のメスが入れられようとしている。具体的には、治療コストとその効果を比較する医療技術評価(HTA)の導入が各国で進んでおり、日本でも薬価算定時に奏効率を参照する制度が試行的に導入されるなど、薬価制度の見直しが再三検討されている。

 一方で、創薬~新薬上市の成功確率は3万分の1といわれるほど難易度が高まってきており、また、核酸医薬品や抗体医薬品、再生医療等、新規モダリティの開発に必要な薬剤開発投資金額は近年急激に増加傾向にある。

 では今後、製薬企業含む医療プロバイダは「医療の質の向上」と「医療コストの抑制」の二律背反をいかにして克服すべきだろうか。一つの方向性が「予防領域への展開」である。

 従来の「臨床アウトカム(有効率、奏効率など)」向上をターゲットとした治療のみならず、「経済アウトカム(費用対効果)」と「患者アウトカム(QOL、ADL、治療満足度など)」を包含する「ヘルスアウトカム」全体の向上に貢献することが求められるこれからの医療において、「予防」アプローチが重要性を増してくる。

 もっとも、ペイシェントジャーニーにおける「予防」アプローチ自体は以前から存在した。例えば、慢性疾患の代表格である高脂血症の治療薬であるスタチン系の薬剤は、高脂血症がもたらす二次的な疾患である心筋梗塞や脳血管障害などの発症リスクを低下させることから、世界で最も服用者の多い医薬品の一つである。一方で、これからの予防医療が従来のそれと大きく異なるのは、その対象が「慢性疾患患者」だけでなく、「健康な個人」にまで拡大されている点である。

図A参照
印刷する
SNSでシェア

視点

この連載の記事をもっと見る

この記事の著者

服部浄児
服部浄児

ローランド・ベルガー プリンシパル 一橋大学社会学部卒業後、伊藤忠商事、米系戦略コンサルティング会社を経てローランド・ベルガーに参画。東京オフィス勤務の後、上海オフィス、ドイツ本社に在籍。帰国後、武田薬品工業に転じ、シニアディレクターとして経営企画業務に従事。2015年にローランド・ベルガーに復職。東京オフィスのヘルスケア・ライフサイエンス・プラクティスのリーダーを務める。再生医療ベンチャーのネクスジェン株式会社のStrategic Advisorも務める

田尻健
田尻健

ローランド・ベルガー コンサルタント 京都大学農学部卒、同大学院医学研究科修了後、ローランド・ベルガーに参画。製薬業界、医療機器業界を中心に、研究戦略、R&D戦略、ビジョン策定等のプロジェクト経験を有する。

関連記事

ITmedia エグゼクテブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら

ぜひこの機会にお申し込みください。

入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。

入会条件:
上場企業および上場相当企業の課長職以上

※入会は無料です

エグゼクティブコンテンツ

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia エグゼクティブ SNS

X @itm_executiveをフォロー

インフォメーション

注目情報をチェック

ITmediaエグゼクティブをフォロー