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中国の目覚ましい成長を支える、不安定な金融基盤海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(3/3 ページ)

ここ数年の中国の経済発展は目覚ましいものがある。こうした中国の経済成長を支える金融政策とは。

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エグゼクティブブックサマリー
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銀行の重要性

 中国の金融システムは国営銀行に頼っています。中国銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、中国工商銀行の四大銀行が、国の金融資産の43%を独占しています。この4つの銀行は大量のローンポートフォリオを持っており、中国国民の膨大な貯蓄から資金を得ています。中国の銀行部門は、共産党によって一元管理されています。また、中国政府は外資系銀行を認めてはいますが、外資系銀行が保有している銀行資産は2%以下です。

 銀行貸出が、内輪経済を煽っています。大手銀行が国債残高の70%を保有しており、それには財務省が発行した国債も含まれています。また、銀行にはまったく規律が無く、専門知識のない共産党支持者を雇用しています。さらに、信用リスクや回収能力を考慮することなく、国の指示のもと貸出を行っています。また、銀行はお金を貸すことを義務付けられていますが、国の支配下にある企業や政府の利害関係団体などの借り手は、ローンの返済を強制されることはありません。その結果、中国銀行は繰り返し倒産の危機に瀕してきました。そして、その度に政府が救済して来たのです。

 いかに中国が外資の力を入れたといってもその金融システムが国内の大手銀行に依存されているということです。また、リスクテイクの考慮なしに融資を行い銀行の経済破綻の危機も何度もあったといいます。そうしたことが今後も続けば、今の経済発展も何かの拍子ではじけてしまう可能性は大きいといえます。

信用の回復

 1997年のアジア金融危機の後、中国の財政当局は相当額の資本を注入し、不良債権を複数の資産運用会社(AMC)に移すことで、瀕死の銀行を再生させました。1980年代に危機に陥ったアメリカの貯蓄貸付組合を救済したアメリカの整理信託公社に習い、AMCは不良債権ポートフォリオを引き受け、証券会社、リース会社、金融会社、保険会社、商品取引会社から損失を引き受けました。その後、2000年までに、ゴールドマン・サックス社とバンクオブアメリカは、見た目は綺麗な中国銀行に投資を行い、欧米式の経営知識を提供しました。

 再編が上手くいき、それ以降、中国の大手銀行は国際市場で多額の資本を調達してきました。しかし、「売掛金」に分類される厄介なアイテムがバランスシートに残っています。その内のいくつかは、1990年代前半まで遡ります。この「売掛金」は財務省の債務です。財務省であるにもかかわらず、この債務は未処理のままです。さらに、政府が銀行を掌握しているため、この債務が償却される見込みはありません。

 このような銀行資産は、欧米の会計分析を混乱させます。なぜなら、誰がその債務を認可したのか、そしてどのように取り立てるのか不明確だからです。これに加え、債務と資本を実質的な政府機関に周りくどい方法で注ぎ込むことで、表向きはAMCに移されることになっている不良債権は、実際、大手銀行の債務として残ったままになっています。

 現在の構造の元では、中央銀行としての役割を持つ中国人民銀行が中国のAMCの保証人であり、すべての銀行破綻を解決する責任を負っています。それでも、銀行はいまだにそれぞれの貸付金債権の評価や信用状の発行、リスク管理を怠っています。

 これに加え、中国人民銀行は、中国の製造および輸出部門を直撃した2008年の世界的金融危機の影響が残る中、景気を刺激するためにものすごいペースで貸出を行ってきました。2009年の1.4兆ドルもの大出費は、間違いなく新たな不良資産の波に繋がるでしょう。中国人民銀行は国の命を受けて、共産党が国の財政を贅沢に使うための小切手を切っているのです。

 この逸話は見せかけの「信用の回復」と言わざるをえないでしょう。その場限りの施策が今後どのように影響を及ぼすかはその時になってみないと分かりません。

著者紹介

カールE・ウォルターは、中国の金融業界に20年間勤めた経験があります。中国初の合弁投資銀行の上級職に就いていました。フレイザー・J・ハウイーは、シンガポールの証券会社の常務取締役です。


プロフィール:鬼塚俊宏ストラテジィエレメント社長

鬼塚俊宏氏

経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。


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