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2014年の新興国経済と日本経済を俯瞰して予想するビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

BRICs諸国である中国、インド、ロシア、ブラジルと隣国である韓国を合わせた5カ国を総括して見ると、2013年以降の景気減速はそう簡単には避けられそうにない。その要因はいくつもある。

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 最後に、借金経済の問題です。これは新興国全体の問題でもあるのですが、最近騒がれているのが中国のシャドーバンキングの問題です。銀行が非公式の融資として仲介し、採算の見込みのない地方の不動産開発に対して、国営企業や共産党幹部から湯水のようにお金が流れているのです。これらのどの程度が焦げ付いてしまうのか分かりませんが、しばらくはこのシャドーバンキングの問題が中国の金融システム不安の火種としてくすぶり続けるでしょう。

 一方で、まったく騒がれていないのが、ブラジルの家計の借金問題です。かつてアメリカの家計の借金経済が住宅価格の高騰によって支えられていたのと同じように、今ではブラジルの家計の借金経済が鉄鉱石価格の高騰によって支えられています。その鉄鉱石の価格が2011年にピークを打ってじりじりと下がり続けています。そろそろブラジルの借金経済が回らなくなってくるはずです。恐らく、2016年のオリンピックまでには、借金経済が崩壊してしまうのではないでしょうか。

 また、韓国も家計の借金経済に苦しんでいます。これは日本と同じく不動産バブルの暴落によって引き起こされています。韓国の家計の借金は史上最高額を毎年更新しており、住宅ローンを抱えた国民は厳しい生活を強いられています。

 それぞれの国々で経済が失速する要因を複数持っていて、それらの要因が複雑に糸のように絡み合っています。そして、お互いに負の作用をもたらしています。新興国を代表する国々は、非常に苦しい経済状況にあることが分かったでしょうか。

 そんな中で世界の国々を見渡してみて、2013年に経済が順調に成長しているのは、アメリカと日本の2カ国だけです。IMFの見通しによれば、2013年の日本の経済成長率は主要先進国でトップになるということです。ところが、2014年の後半になってくると、事情が大きく変わってきます。というのも、日本の成長率が2014年4〜6月期から著しく悪化することがほぼ間違いないからです。

 日本の成長率は2013年1〜3月期は4.1%、4〜6月期は3.8%と順調に成長しているように見えます。この流れは7〜9月期も続くでしょう。しかしこれは、初めから分かっていたことです。政権が発足した当初、安倍首相は「消費税の増税は2013年4〜6月期のGDPを見て決める」と公言したからです。この首相の発言を受けて、財務省は2013年4〜6月期とその前後の期のGDPが上ブレするように公共工事の執行時期をうまく調整したのです。

 さらに、2014年3月までは、消費税増税を前にして駆け込み需要が発生し続けます。2014年1〜3月期までは、GDPがかさ上げされることになるわけです。2013年に入ってから住宅やマンションの販売が好調ですが、住宅やマンションが売れるということは、家具や電化製品、身の回り品などの需要も増加し、経済への波及効果は思いの外大きなものになります。消費も2014年3月までは期待していいのです。

 ただし、住宅やマンションの需要を数年分先食いしているために、その反動もかなり大きくなることは覚悟しなければなりません。

 恐らく、2014年4月〜6月期のGDPは、公共工事と需要先食いで二重にかさ上げされた効果がはげ落ちるだけでなく、増税により消費者の財布がより引き締まるため、大きく落ち込むことが考えられます。

著者プロフィール:中原圭介(なかはら けいすけ)

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー兼エコノミストとして活動。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・金融教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や心理学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析し、予測の正確さには定評がある。

主な著書に『シェール革命後の世界勢力図』『経済予測脳で人生が変わる!』(ダイヤモンド社)、『アメリカの世界戦略に乗って、日本経済は大復活する!』『これから世界で起こること』(東洋経済新報社)、『騙されないための世界経済入門』『2015年までは通貨と株で資産を守れ!』(フォレスト出版)、『アベノミクスの不都合な真実』(角川書店)、『お金の神様』(講談社)などがある。


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