なぜ、あのリーダーには、自然と人がついてくるのか?――人を引きつける「おもしろさ」の流儀:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
「サラリーマンNEO」はなぜおもしろいのか。担当ディレクターが多くのスタッフや役者をまとめ、作品を完成させるために切磋琢磨した会話術とは?
「おもしろいリーダー」は「聞ける人」
仕事をしていて思うのは、人は「自分の話を聞いてくれる人」「自分の話をおもしろがってくれる人」をおもしろいと思うんです。
例えば、あるプロジェクトで、外部の人と意見交換をするとしますよね。極端にいえば、自分の意見は出さなくても「ああ、それはいいですね」「それはおもしろいですね」と言っているだけで、相手から「おもしろい人だ」と思われるんです。
心理学でも「返報性の法則」というのがありますが、それと似ているのかもしれません。
「サラリーマンNEO」のシーズン3以降、自分でもネタ切れになってしまった時があって、悩んでいた時があります。そのとき、カメラマンから「もっと人を信頼しろよ」と言われました。それからです。人の意見を聞くようになったのは。
そして、シーズン4以降のほうがおもしろい、って言われることが多くなりました。
最初は、アイデアを出されても、「そんなのつまらないんじゃないの」って思ってるし、実際に口からその言葉が出かかっているんです。でも、そこを飲みこみます。
そして、「なんでそう思ったの?」って、聞いていきます。すると、相手が思っていることが分かりますよね。このとき、詰問になってはいけません。そうなると、結局相手は本心を言えません。
こういうことをしていると何が起こるかというと、みんながその仕事をおもしろがって取り組んでくれるようになるんです。
僕のドラマ制作の現場での話です。
皆さんがドラマを見ているときに出てくる小道具は、すべて演出が決めます。例えば、パーティのシーンがあったりしますよね。そのときも、「この人のグラスはこのグラスでこのくらい、こんな飲み物がどれくらい入っていて……」とひとつ一つ設定していくわけです。大人数だと大変ですよ。でも、そうやって「いいね、おもしろいね」って相手の意見を取り上げるようにしておくと、向こうで勝手に考えてくれるんですね。
2月に「ジャンクション」という恋愛コメディを演出したのですが、そこでホームパーティのシーンが出てきます。個々にグラスを持ってワインを飲んでいるんですが、小道具の担当のひとりが「小鳥の形をした水差し」を持ってきました。くちばしから水が出てくるので、この登場人物は、これでワインを飲んだらおもしろいんじゃないですか、って提案してきたのです。もちろん採用しました。
リーダーになると、全部自分で頑張らなくちゃと思うかもしれませんが、本当はそんなことはありません。
余裕をもって、「おもしろい」リーダーでいることで、みんなが話しやすくなります。すると、たくさんのアイデアが出てきます。結果、仕事もおもしろいものになります。
「聞くこと」「自分の失敗を話すこと」。いずれでも1週間、やってみてください。これだけで、だいぶ人の印象は変わってくるはずです。
著者プロフィール:吉田照幸(よしだ てるゆき)
1969年、福岡県生まれ、山口県育ち。1993 年NHK 入局。NHK エンタープライズ番組開発部エグゼクティブ・プロデューサー。ここ10 年でもっともコントを制作している。「のど自慢」「小朝が参りました」などエンターテイメント系の番組を中心に活躍。40 分間1 人で舞台で場を持たせるなど前節の技も鍛える。広島放送局を経て番組開発部異動後、2004 年に「サラリーマンNEO」を企画、以後全シリーズの演出を担当。型破りな番組として人気を博す一方、タニタの社食、Google 本社を日本のテレビ番組として初潜入、コント番組に日産のカルロス・ゴーン氏を引っ張り出すなど、話題となった。2011 年には「劇場版サラリーマンNEO( 笑)」の脚本・監督を務める。第35回・36 回国際エミー賞コメディ部門ノミネート(連続ノミネートは日本では唯一)。2013 年春、異例のレンタル移籍で、連続テレビ小説「あまちゃん」の演出を担当。現在、「となりのシムラ」などコント番組、コメディ、ドラマを制作中。次回は「洞くつおじさん」のドラマを準備中。
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