ASEANに求められる技術革新――ASEANにおけるIoT/Industry 4.0の潮流:飛躍(4/4 ページ)
技術革新や高付加価値化というと、日本や欧米などの先進国が中心と思うかもしれないが、近年それはASEANにおいても重要なテーマとなっている。
3. 日本企業にとってのASEANにおける技術革新の意味合い
ASEANにおける技術革新・高付加価値化はまだ初期段階であるが、2章で見てきたように、一部では、産業の課題を解決するソリューションとしての導入が始まっている。市場には欧米や他アジアの企業も参入し、厳しい戦いとなる中、日本企業にとってASEANにおける技術革新・高付加価値化は、以下の3つの観点で重要となる。
3.1 日本企業のASEANにおける競争力の維持
日本企業は長きにわたりASEANの発展をリードし、ポジションを確立してきた。ただし、競争環境が変化する中、今後はASEANの一層の技術革新や高付加価値化に貢献できたプレイヤーが主権を握っていくことになる。日本企業の取り組みによっては、参入してきた欧米などの競合と立場が逆転する恐れもある。日本企業はASEANの技術革新・高付加価値化に対して、保有する技術力やポジションを最大限生かし、先陣を切って取り組んでいくべきである。
3.2 ASEANのグローバルにおける競争力の維持
ASEANにおける技術革新・高付加価値化がインドや中国に対比で遅れた場合はASEANのグローバルにおける立ち位置自体が低下する。日本企業にとってASEANは重要なマーケットであり、成長が鈍化するのは望ましくない。
3.3 日本企業のグローバルにおける競争力の強化
ASEANでの取り組みは、日本企業のグローバルにおける競争力向上にもつながる。今後、ASEANは経済発展とともに発電プラントや工場、物流拠点などの新設が見込まれ、先端技術を導入しやすい環境にある。さらに、各国政府は新しい取り組みを法制度などの観点から積極的に後押ししている。日本企業にとって新興国の中でもASEANは、一定のポジションを確立できている地域である。日本企業は他市場に先駆けてASEANで実験的に新しい技術を導入・実用化し、グローバルにおける自社の競争力を高めていくことができる。
ASEANにおける技術革新・高付加価値化はASEANに閉じたイシューではなく、今後のグローバル各国の力関係や日本の将来の競争力にもインパクトを与える。日本企業は持ち前の技術力やASEANに確立したポジションを生かしてASEANの今後の経済・技術発展を主導しつつ、さらにその中でグローバル競争力をつけていくべき段階にある。
著者プロフィール
山邉圭介(Keisuke Yamabe)
ローランド・ベルガー アジアジャパンデスク統括 シニア パートナー
一橋大学商学部卒業後、国内系コンサルティング・ファームを経て、ローランド・ベルガーに参画。
自動車、部品、建設・住宅、航空、消費財、など幅広い業界において、営業・マーケティング戦略、ブランド戦略、グローバル戦略、事業再生戦略の立案・実行支援に豊富な経験を持つ。
近年は、新興国戦略の分野で数多くのプロジェクトを手がける。
著者プロフィール
石毛陽子(Yoko Ishige)
ローランド・ベルガー シンガポール・ジャパンデスク プロジェクトマネージャー
東京大学文学部卒業後、日系証券会社に入社。日本・シンガポールにて経営企画・投資銀行業務に従事した後、ローランド・ベルガーに参画。
金融、商社、メーカーなど幅広いクライアントを対象に、成長戦略、市場参入戦略、技術戦略、営業・マーケティング戦略のプロジェクト経験を多数有する。2015年より、シンガポール・ジャパン・デスク在籍
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