たくさんの仕事を抱えているのに、なぜまるでストレスがないのか〜「何でもメモ」して外に出すというシンプルな方法:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
日々ものすごい量の情報が目の前を通り過ぎていく。とてもではないが、全てを覚えてなどいられない。そこで活躍してくれているのが「メモ」なのだ。
これを確信できたのが、ある大学教授への取材だった。彼は「人間は忘れる生き物である」と断言していた。実は人間が近代文明を生きているのは、長い歴史上、ほんのわずかな期間でしかない。
その多くの期間、人間はジャングルに暮らしていた。ジャングルには、どう猛な動物や毒虫などが潜んでいる。少しでも気を緩めてしまうと、ガブリとやられてしまいかねない。そこで、常に危険に反応できるよう、脳のスペースを開けておくようになっている、というのである。そのために、どんどん忘れるようにできているのだ、と。
人間がなかなか集中できないのも同様である。何かに長い時間、集中していたら、ジャングルの中では、ガブリ、である。だから、集中できないのも当たり前なのだ。アインシュタインやニュートンなどの天才がもし大昔に生まれていたら、ジャングルの中で長くは生きられなかっただろう、と教授は語っていた。
そうなのである。人間は忘れるのだ。だから、とにかくメモをとらないといけないのである。やらないといけないことも、全てメモを取る。そうすると、安心して脳のスペースを空けられる。そして問題は、それをどこにメモし、それをどう管理するか、だ。
あちこち適当にメモを残していては、どこかに行ってしまったりする。多くの人にメモをもっともっと活用してもらうべく著した『メモ活』(学研プラス)では、その方法について詳しく書いている。
例えば、大きなサイズのノートや手帳を使うのも、その一つ。小さなメモ帳は管理が大変だからだ。また、「to doリスト」はもっともっとカジュアルに使ったほうがいい。とにかく何でもリスト化してしまう。そして、スケジュールと連動させる。
そうすることで、漏れもなくせるし、「あれをやらないといけない」「これをやらないといけない」といったストレスに追われることもなくなる。やらないといけないことを外に出すと、そのことを忘れることができる。これが、ストレスを減らす。もとより、忘れることは人間に刻み込まれたプログラム。心地がよいのだ。だから、私はどんどんメモして、どんどん忘れるようにしている。おかげで、大量の仕事でもストレスはない。
もう一つ、企画に携わる仕事をしているので「アイデアが思い浮かばなくて困る」という相談も受けるのだが、これもメモが解決してくれる。そもそも企画はデスクで考えてはいけない。アイデアというのは、脳が油断したときにハッと思い浮かぶからである。
シャワーを浴びているときに、なぜかアイデアが浮かぶ、という人も多いのは、そのためだ。だから、ジョギングをしたり、ジムに通ったりするクリエイターや経営者は多い。脳を別のことで油断させることによって、アイデアを出しやすくしているのだ。
アイデアは、外で考えたほうがいいのである。通勤途中の電車の中だったり、買い物の途中だったり、駅まで歩く道だったり。指令を出しておくと、脳は常に考えてくれている。それを取り出すときに必要なのが、トリガー。いろんな刺激を脳に与えることが必要だ。そこから、いきなりアイデアが取り出せるのである。
何かが浮かんだら、とにかく「メモ」する。今はスマホという便利なものがあるので、そこにすかさず記録する。そうやってメモが増えていくと、不思議なもので、メモを眺めているだけでまたアイデアが浮かんで来る。「アイデアメモ」を活用し、時間をかけてアイデアをブラッシュアップしていくことができるのである。
メモには大きな効能がある。もっともっと多くの人に、そのことを知ってほしい。
著者プロフィール:上阪徹
1966年兵庫県生まれ。リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスに。著書に『成城石井 世界の果てまで買い付けに』『職業、挑戦者 澤田貴司が初めて語る「ファミマ改革」』『JALの心づかい』『文章の問題地図』『10倍速く書ける 超スピード文章術』など多数。インタビュー集に『外資系トップの思考力』『プロ論。』シリーズなど。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品も80冊以上に。
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