車載電池から始めるデジタル・プロダクト・パスポート(DPP)(2/2 ページ)
DPPとは、サーキュラーエコノミーを促進すべく、製品の情報を記録する「電子パスポート」である。製品情報には、製品の全ライフサイクルにおける重要なデータとして、製造元、使用材料、リサイクル性、解体方法や利用履歴などが含まれる。
DPPによる新たなオポチュニティ
DPP導入は対応が必要となる負の面のみではなく、新たな事業機会ともいえる。昨今のレアメタル争奪戦に伴い、リサイクル・リユースへの期待は更に高まっている。例えばVWは2021年から自前工場でリサイクルに着手も、2022年にはRedWood Materials(米)やJX金属(日)との提携実証も加速している。リサイクル技術進化・処理キャパシティ強化に加え、そもそもの受入増に向けて、データを生かしたSoH(State of Health)モニタリングやユーザへの自社系列静脈チェーンへの持ち込み喚起なども重要となりえる。
加えて、データ整備に伴い、車載電池を取り巻く診断/修繕・リース・保険などの事業機会も台頭しうる。例えば、車載電池の残価評価を進めるBACEコンソーシアムはEV普及の進む中国にて損保・リース会社を巻き込んでユースケースを検証、2022年10月にはNTTデータがデンソーとBEV車載電池の業界横断エコシステム構築を発表する等、データ整備に伴って自動車系プレイヤーに限らず、注目すべき領域となっている。
この変化をどのように捉えるのか
自動車系プレイヤーとしては、先行する欧州プレイヤーの動向に鑑みてもDPP対応の飛躍的効率化は図り難く、「やるべきことを明確化して粛々と対応」する必要がある。むしろ同時に狙えうるチャンスに対し、早く具体的に描き、検証し、立ち上げていくことを考えても良いのではないか。
また周辺事業者としては、データ整備に伴う新たな事業機会と捉えることができる。その際、業界横断の検討となりうる点、BEV化の進行が欧・中・米などがより早く進むことを配慮の上で、事業案を早く描きその実現性を検証していくことが必要ではないか。
著者プロフィール
石村彰大
ローランド・ベルガー プロジェクトマネージャー / 東京オフィス
東京大学農学部卒業、同大学院農学生命科学研究科修了。日系ITコンサルティングファーム、同社米国研究所を経て現職。自動車、産業材、素材・化学、電子部品、消費財・ヘルスケア関連のプロジェクトにて、事業戦略立案、新規事業開発、BDD/PMIなど多様なテーマのコンサルティングに従事
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