深く考える力を組織の中で生かす方法:海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(3/3 ページ)
考える力を継続的に育むことが、何を生み出すにおいても要である。考えることがなぜ大切なのか? その状況を確保するためにはどのような方法があるのか?
組織環境とマーケット環境の中で考える
自分の企業の従業員と外部の人間が、有益な意見を用意し、話し合いの中で生まれるアイディアが引き起こすと思われる影響について考える準備を整えてから会議に出席した場合、その会議がどのようなものになるか想像してみてください。これを実現するには、企業は参加者が精神を集中し続けられるようにしなければなりません。
発表者に、「コンテンツの投げ捨て」をしないよう言い聞かせてください。コンテンツの投げ捨てとは、聞き手に文脈の無いデータを大量に浴びせることです。資料は事前に渡してください。そうすれば、参加者は時間をかけて思慮に富んだ返答をする準備を整えることができます。アイディアを発表する際は、小休止を挟みましょう。そうすることで、考える時間を取ることができます。
アイディアを「再構成」する練習をして、アイディアをより有益な状況で使えるようにしましょう。異なる考えを持った人を会議に参加させ、意見の相違やあい昧なものを探し出してください。そして、その会議の中の自分の役割や、自分がどのような「メンタルモデルや偏見」を持ち込んでいるか認識してください。自由回答形式の質問を投げかけて新しいアイディアを生み出し、そのアイディアを厳密にテストしてください。質問を繰り返し投げかけることで話し合いを進め、主要トピックに繰り返し戻って来るよう促してください。
同じ考え方を持たなければならないと思わせるマーケットのプレッシャーに反発することで、組織を守ってください。集団志向は、深い思考の妨げになります。これは、2008年の金融危機に繋がった、何年もかけて生まれた傾向を見れば分かると思います。この金融危機では、リスク評価をする責任を持った人を含め、ほぼすべての人が不動産市場と株式市場の混乱に巻き込まれました。
そして、社会および個人の欲望によって、人間が共通して持つ「調和」を望む気持ちが強められました。調和を望む気持ちとは、「世界観を一致させたい」という願望です。この傾向を無くすには、災難を予測し警告を発する人の言葉に耳を傾けてください。物事に疑問を持つ訓練をし、過激な主張は常に疑うようにしましょう。また、直接的な調査を行い、組織の外の人間からフィードバックをもらうことで、自分の意見が正しいかどうかテストしてください。
アイディアを実践可能なものにすることができれば、ビジネスは大きく発展します。ここに書かれていることは、本当に絶賛に値する一つのシステムだと思います。中でも人の願望に調和を基準に感情を統合することも組み込ませているため凄く価値のある実践的なノウハウだと思います。
戦闘の中で考える時間を作る
軍が、敵と交戦を始めると、攻撃の勢いが増すにつれ、兵士の行動への偏りが強くなります。戦闘中の兵士は考える時間を十分に取ることができません。しかし、作戦がうまくいかない時は、考える時間を取らなければなりません。2005年と2006年のイラク戦争ではそのような状態が起こりました。
兵士個人が現地先住民と交流する新しい方法を学んでいたにも関わらず、米軍は兵士たちの意見を正式な政策に取り入れる仕組みを持っていませんでした。この難しい問題に対処するために、軍民の専門家と人権擁護家は米国の議会に出席しました。その議会にはペトレイアス大将も出席し、発言の自由を強く要求し、集団志向を意識的に批判しました。そして、新しい対反乱活動マニュアルの草案を発表し、厳しい批判の声を受け止めました。
その結果出来あがったマニュアルには、それまでの常識に反した奇抜な内容が織り込まれ、軍のマニュアルにしては印象深いものになりました。例えば、「時によって、使用する武力が大きければ大きいだけ、その効力は小さくなる」といった内容が織り込まれました。これにより、そのマニュアルの読み手は、武力の性質と機能について考えるようになりました。
例え反対派の意見であれ、必ず何かを生み出す大いなる資源になるのではないかと思います。このように例え些細な芽であっても安易に摘みとらず肯定的に受け入れ思考のテーブルにのせてみることこそ、真のイノベーションへと進むものだといえるでしょう。
著者紹介
ダニエル・パトリック・フォレスターは、経営コンサルタントであり、ベライゾン社から全米退職者協会、さらには米海兵隊まで幅広い組織を担当しています。サピエント・ガバメント・サービス社のディレクターです。
プロフィール:鬼塚俊宏ストラテジィエレメント社長
経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。
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