経営者は、世界経済が厳しい時こそ、若い人材の育成に力を入れるべきである!:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
仕事に取り組むときにぜひ考えてほしい、どうすれば自分の価値が上がるのか。利益に貢献する人材になれば、世界経済が厳しくとも恐れることはない。
いかにして自分の価値を上げるのか
では、会社の利益に貢献するには、どのくらい頑張る必要があるのでしょうか。一般的な目安は「給料の手取り額の3倍を稼ぐ」ことです。もしもあなたが入社1〜3年の若手社員で、給与の手取り額が15万円であれば、少なくとも月に45万円を稼がなければ、会社に貢献しているとはいえないのです。
会社は、あなたに給料を支払っているだけでなく、さまざまな費用を支払っています。オフィスや工場の賃料、水道光熱費、通信費、その他の設備費用など項目を挙げたらキリがありません。銀行などからの借入金の返済もあります。あなたの健康保険料と厚生年金も半分を負担しています。会社が社員を雇うためのコストは、想像以上に大きいのです。こうした費用が従業員1人あたりいくらかかっているのかを、考える必要があるでしょう。あなたが給与の手取り額の3倍を稼いでも、これらの費用やコストを差し引いた会社の損益は、やっとトントンという感じなのです。
経験の浅い若手社員が給与の手取り額の3倍を稼ぐのは簡単なことではありませんが、「どうせ無理だ」とあきらめて努力を放棄したり、経験や能力を身に付ける前に転職を繰り返したら、いつまでたっても会社の利益に貢献できる人間にはなれません。昔と違って、現在の日本の会社は、能力主義で人材を評価するのが一般的ですから、利益貢献できない人間は、どこに行っても何年たっても待遇が良くはなりません。
しかし逆に、自分の給与の手取り額の4倍も5倍も稼げる人なら、会社にとって手放せない人材とみなされるはずですし、結果に応じて給料も上がっていくでしょう。転職をするにも、優秀な人材であれば、引く手あまたです。そうした価値ある人材になるために、特に若い時期は仕事に没頭すべきなのです。投資や資産運用などに夢中になっている時間はありません。自己投資に時間とお金を掛けるべきです。
自己投資をするうえで、ひとつ心掛けてほしいことがあります。それは、現在の会社だけでなく、将来どんな会社に転職するにしても、どこに行っても応用可能な仕事能力を身に付けるということです。例えば自動車ディーラーのセールスで優秀な成績を上げた人は、化粧品を売っても、金融商品を売っても、同じように高い成績を上げられる人が多いという事実があります。取り扱う商品は違っても、顧客を引き付けるコツや、購入を促すアプローチの仕方に違いはないからです。
このように、どこに行っても役立つ能力やスキルを身に付ければ、厳しいリストラ社会でも恐れるものはありません。もちろん、いま働いている会社の専門知識やノウハウをしっかりと身に付け、業界のプロフェッショナルになることも大切ですが、一方で、社会人やビジネスマンとして応用性の高い能力やスキルを高めておくことが大切だと思います。
スキルを高める方法については、本書で述べていますが、経営者の皆さんには経済が厳しい時こそ、自分の会社のためだけではなく将来の日本経済のために若い人材の育成に力を入れてほしいと思います。そのためにも、この本を若い人たちに読んでもらい、そのきっかけづくりになれれば幸いです。
著者プロフィール:中原圭介(なかはら けいすけ)
金融・経営のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」のエコノミスト兼アドバイザーして活動。金融機関や企業への助言・提案や富裕層の資産運用コンサルティングを行う傍ら、執筆・セミナーなどで金融教育・投資家教育の普及に努めている。経済だけでなく、歴史や心理学など、幅広い視点から世界経済の動向を分析し、経済予測の正確さには定評がある。主な著書に『2013年 大暴落後の日本経済』『経済予測脳で人生が変わる!』(ダイヤモンド社)、『騙されないための世界経済入門』『サブプライム後の新世界経済』(フォレスト出版)、『お金の神様』(講談社)などがある。
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