MBA社長は仕事をシンプルに考える――できない部下を「できる人」に:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
チーム全体でのパフォーマンスの最大化が、マネジャーの仕事だ。必ずしも全員にホームラン・バッターの役割を期待する必要はなく、未熟なメンバーはどのように平均点プレーヤーにしていくかだ。
「シンプルな段取り付け」を教える
スタッフをさらに仕事のできる部下に育てたい、と思ったら次は効果的な「仕事の段取り付け」を覚えさせることです。そしてその「段取り付け」を本人が分かるだけでなく、上司であるあなたにもいつでも説明できるように「見える化」する手法を指示してあげましょう。
まず一番簡単なこととして、「机の上を綺麗にしておけ」ということを教え込みましよう。机の上は、実はそこに座っている社員の頭の中の状況が再現されているわけです。これが整頓されていないと、仕事の手順も大混乱しています。若いときにしっかり習慣づけしてあげます。時間管理と同じで、「頭の中の管理」の習慣づけが有効です。「えーっ、自分の机の上が大変だ!」ですって?マネジャーであるあなたの机がそんな状態だと、もう上を目指すのは難しいかもしれません。
「段取り付け」の入門として「todoリスト」を付けさせます。帰社する前に、翌日すべきことを箇条書きにして、上司の目に触れるところに残させます。翌日は、それを消し込みながら「穴のない」仕事をして貰おうじゃあないですか。そうさせるのは、マネジャーであるあなたの指導となります。
シンプルに時間を使わせる
わたしも幾つもの会社でたくさんの部下を持ってきました。わたしの体験から言うと、「できる社員」は、共通して時間の使い方がうまいです。逆に言うと、新参者や未熟な部下を早く一人前にする1つの方法は、「時間の使い方」を教えて上げることです。
「指示待ち型」の社員の場合だと、「あれをやれ」「次はこれをやれ」と言われるまでは待ちの姿勢です。マネジャーは部下全体をいつも注視していられるわけもないので、「指示待ち型」部下は文字通り指示を待ってしまう「アイドル時間」ができてしまいます。この「空き時間」を自律的に埋めていって自ら仕事を前倒しにこなしていけるようになるには、ここでもマネジャーの指導が必要です。誰でも最初から、マネジャーになれたあなたのように有効に時間を使えるわけではないからです。
部下の一人ひとりと面談して、時間管理をどうやっているか、「隙間時間」の発見と活用の仕方、朝時間の使い方などを具体的に指導してあげましょう。
プロジェクト型にはポスト・イット、部門戦略に「戦略カードとシナリオ・ライティング」
不定形型の業務が多い部下の場合は、箇条書きの「todoリスト」ではなく、1項目1枚型のポスト・イットがよいでしょう。トランプより少し大きめなカードサイズがお勧めです。カードには締め切り時間も書けますし、重要な順とするなどの利点があります。これを机の周りに貼り出しておいてもらいます。
本人は始終それらをながめて、各カードの進捗具合を意識できます。また上司もそれらを眺めて状況を類推することができます。上司として助言して上げるのはスケジュールと優先順管理です。締め切りのあるプロジェクト的な業務を複数走らせているような部下には、時間的に余裕を持った段取りで行うように指導すべきです。本人が想定しなかったようなことがいくらでも起こりうるからです。
マネジャー自身が部門全体の業務計画を整理、策定するには「戦略カード」が有効です。「戦略カード」を使って、「シナリオ・ライティング」手法で、「目標」「課題」「解決策」「派生問題と対処」とステップを踏むと、有効な部門戦略が策定できます。詳しくは「MBA社長は仕事をシンプルに考える」を参考にしてもらえればと願っています。
著者プロフィール:
山田 修
有限会社MBA経営 代表取締役。
1949年生まれ。学習院大学及び大学院修士課程卒。青山学院大学経営学部修士課程を留学のため中退。サンダーバード国際経営大学院(MBA)、同校日本同窓会元会長、元准教授。法政大学経営学部博士後期課程満了。外資系会社のマーケティング・マネジャー、コンサルタントを経て、6社で社長、「再生請負経営者」と評された。2008年より(有)MBA経営代表として講演・研修指導のコンサルティング専業。経営者・幹部に戦略を立案してもらう「経営者ブートキャンプ」を主宰。『MBA社長のロジカル・マネジメント』『タフ・ネゴシエーターの人を見抜く技術』(以上、講談社)、『MBA社長の実践「社会人勉強心得帖」』(プレジデント社)、『6社を再生させたプロ経営者が教える〈超実践的〉経営戦略メソッド』(日本実業出版社)、『実践! 企業再生52週間プログラム』(ダイヤモンド社)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版))、共著に『プロフェッショナルリーダーの教科書』(東洋経済新報社)など著書多数。
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