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いま「反論する技術」が求められている。それは「違う立場の」の人と、感情ではなく、冷静に意見交換できる力。ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

わたしたちの先祖が長い歴史のなかで成長を遂げてきた、いまある社会のレベルおける冷静な対応が求められている。

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「感情」をむきだしにしてはいけない

 だからといって「感情」をむきだしにしてやりかえすのは、(言葉はわるいですが)それは、大人としてまだ成熟しきれていない「子どものケンカ」と同じになってしまいます。ここにいう「子ども」というのは、未成年者という意味の年齢的な子どもを意味するのではありません。中身がどれだけ、現代的に成長しているかという意味です。

 書店にいくと「日本史」「歴史書」がたくさん置かれています。いまの日本は、生きにくい社会になり、さまざまな不安に直面しています。そのため、この国が過去に経験した苦難や不安をどう乗り越えてきたか、それを改めて学ぶ必要性が、われわれに潜在的に芽生えているのだと思います。

 歴史を学ぶと、現代(2012年)に至るまで、社会そのものが成長してきたことが分かります。わずか100年前にさかのぼるだけでも、今の日本と過去の日本はまったく違います。例えば今は「1票の価値」が大きな社会問題になっていて、裁判所も違憲状態であることを警鐘する判決を出していますが、100年前の日本であれば、1票の価値どころか、女性には選挙権がなかったわけです。

 こうしたことを考えると、年齢的な子ども、大人ということよりも、わたしたちの先祖が長い歴史のなかで成長を遂げてきた、いまある社会のレベルおける、冷静な(大人としての)対応が求められていると思うのです。

 その際に「価値観の相違」から(「考え方の相違」から)ぶつかりあわざるを得ない相手とも、冷静に議論を行い、あなたの考えを示し、相手からの批判や指摘をかわすために、身に付けるべきと思うのが「反論する技術」です。

 といっても、われわれが実際に「反論をする」機会というのは、社会問題や外交問題、政治問題というよりも、もっと身近なことでしょう。勤め先での上司とのやりとりであるとか、先輩や後輩との議論であるとか、お客さまや取引先との交渉などの場面だと思います。もっとプライベートで、親や家族、友人、知人、仲間、恋人との「ささいなこと」での「対立」や「意見の相違」などの場面もあるでしょう。

そんな場面で身につけておくと、大きなストレスを抱えないですむのが「反論する技術」です。大きなストレスを抱えないというのは、こういうことです。自分の意見を相手に上手に伝えられない、相手の批判や指摘にうまく答えられない、という状態は、心理的に不安や葛藤をもたらします。それが日常的にあると、ストレスになってしまうおそれがあるからです。

 逆に、感情レベルではなく、理性的に上手に「違う立場」の人からの批判や指摘に対応できるようになれば、ストレスにはなりません。結果として自分の意見がとおらなかったとしても(そもそも価値観の違う人に、価値観の違う考えを理解してもらうということは困難な問題です)、あなたの立場からはいうべきことはいった、という気持ちになれれば、日常的に余計なストレスを抱えずに済むはずです。

 ディベートや討論番組のように白熱した熱い議論を展開する必要はありません。場合によっては、「なにもしゃべらない」という方法もありますし、「相手に質問をする」という方法もあります。「反論する技術」を身に付ければ、議論そのものも楽しめるようになります。「違う立場」の人と話をすることも、苦でなくなり、学びの機会も増えます。

著者プロフィール:木山泰嗣

1974年横浜生まれ。弁護士。上智大学法学部卒。都内の鳥飼総合法律事務所に所属し、税務訴訟及び税務に関する法律問題を専門にする。主な担当事件に、ストック・オプション税務訴訟(最高裁第三小法廷平成18年10月24日判決等で逆転勝訴)などがある。青山学院大学法科大学院では「租税法演習」を担当(客員教授)し,上智大学法科大学院では「文章セミナー」講師を担当している。2011年に『税務訴訟の法律実務』(弘文堂)で、第34回日税研究賞「奨励賞」受賞。一般書から専門書まで幅広いジャンルで執筆活動も行っている(単著の合計は20冊)。著書に『弁護士が書いた究極の勉強法』『小説で読む民事訴訟法』『勉強が続く人の45の習慣』(いずれも法学書院)『憲法がしゃべった。』(すばる舎)『もっと論理的な文章を書く』(実務教育出版)『センスのよい法律文章の書き方』(中央経済社)『最強の法律学習ノート術』(弘文堂)『分かりやすい「民法」の授業』(光文社新書)『反論する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『情報をさばく技術』(日本実業出版社)などがある。「むずかしいことを、わかりやすく」、そして「あきらめないこと」がモットー。


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