僕たちは「会社」でどこまでできるのか?――モーニングピッチ「創業者」塩見哲志氏は、いかにしてイントレプレナーになったか?:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
日本はベンチャーが育ちにくい環境にある。資金面、大企業と取引するための信用など実績重視の評価はベンチャーには不利である。このようなベンチャーの過酷な環境を改善したいと、企業をまたがって立ち上がった20代の若者がいた。
どのようにして会社を巻き込んで行ったのか?
ビジネスは価値の対価として収益を上げることが原則だ。そのため、当然のことながら、企業内で評価される最も重要なものさしは、収益への貢献となる。ここを勘違いしている人があまりに多い。自分のやりたいことをだけをしていては会社から評価されるはずはないのだ。
しかし、新しい取り組みはすぐに収益に繋がることは難しいし、したがって応援者を集めたり、社内の公式なプロジェクトにしたりすることは容易ではない。
では、塩見氏はどのようにして企業の中で協力を得たのか? それは、使命に共感してもらった相手に業務時間やリソースの一部を無償で「投資」してもらったのだ。相手の負担は「このくらいであればそれほどダメージを受けない」という程度が丁度良い。多くを求めず、リスクは自分で抱える。小さな「イエス」を積み重ねて行き、急がば回れの道を辿る。
そして、重要なのは、上司の許可を取ることだ。自分のやろうとしていることを説明し、時間を使ってよい、という許可をもらっておく。上司は、止めはしないけど協力もしない、という状態を作っておくことが、うまくいった時の展開に効いてくるのだ。もちろん、リスクは自分でとる覚悟が必要だ。
出る杭、ということの本質
塩見氏はこのように言う。
「経営側に伝わるように堂々と戦い、価値を生み出すという行為を続けていれば、最初は叩かれていてもそのうち認められ叩かれなくなる」
したがって、
「出る杭は打たれることを否定的に捉えるのではなく、打たれているうちが華だと思い行動することで結果は大きく変わる」
「叩かれるのは、このビジネスモデルが、<実現可能性が低いから、次のチャンスを待ちなさい>か、<実現可能制は低くないが、工夫が必要なので出直して来なさい>かのどちらかのメッセージだと捉えることだ。」
すべては、将来収益に寄与する可能性のある提案を頭ごなしに否定する経営者がいる筈がないという、企業経営の原則を信じていることが根底にある。
一度叩かれると、「やはりウチの会社では変革などできっこないんだ」というネガティブ・メンタルモデル(囚われ、思い込み)に陥り、二度とチャレンジをしない人が圧倒的に多い。しかし、それは、タイミングが悪かっただけかもしれないし、準備不足だっただけかもしれないのだ。
そして、なんと「自分だけが出るのではなく、周りの杭も自分に揃うように出してあげれば打たれません」というコペルニクス的発想の転換とも言えることを述べている。
確かに、そうならなければ企業において次の収益源となりうるようなイノベーションなどは生まれないということだ。
著者プロフィール:小杉俊哉
合同会社THS経営組織研究所代表社員
慶應義塾大学SFC研究所上席所員
早稲田大学法学部卒業。日本電気株式会社入社。海外営業グループ、法務部勤務。30歳の時、私費にてマサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院留学、修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー インク、ユニデン株式会社人事総務部長、アップルコンピュータ株式会社人事総務本部長を経て39歳で独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授を経て現職。
著書に『起業家のように企業で働く』(クロスメディア・パブリッシング)、『リーダーシップ3.0―カリスマから支援者へ』(祥伝社新書)、『30代の働き方には挑戦だけが問われる』(すばる舎)など多数。
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