「社長の覚悟」守るべきは社員の自尊心:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
モノを生み出すのもヒト。カネを増やすのもヒト。会社を生かすも殺すもヒトと組織次第。
動きすぎる社長が会社を潰す
一般に会社経営に不可欠な資源として、「ヒト、モノ、カネ」の3つが挙げられます。しかし、私の考えは違います。モノを生み出すのもヒト。カネを増やすのもヒト。つまり、会社を動かすのは「ヒト、ヒト、ヒト」であり、会社を生かすも殺すも「ヒトと組織次第」なのです。
動きすぎる社長の下では、経営の最も重要な資源である「ヒト」、つまり社員は育ちません。これは、これまでの経営者やアドバイザーとしての経験を通じて得た、私の結論です。そして、社員が育たなければ、会社の事業がうまくいくはずもありません。
例えば、社長がすべての案件に口を出し、細部にわたって指示を出したらどうでしょう? 社長自身はそれで満足かもしれませんが、そんな仕事に社員の納得感や達成感はありません。やがて社員たちは仕事へのヤル気を失い、会社を去っていくか、社長の指示どおりに惰性で仕事をこなすようになります。社員の自尊心の消滅です。この結果、その会社の経営は停滞するか、傾いていきます。
そう、まさに「動きすぎる社長が会社を潰す」のです。
自発的に動く社員を育てる7つの法則
しかし世のほとんどの会社では、動きすぎる社長に対して誰も釘を刺さないため、社長は自分の誤りに気づかず、延々と空回りを続けています。
社長が、自分のために自分のやりたいことをやりたいようにやっている会社は、すぐに限界がきます。社員の力を最大限活用してこそ成長があるのです。さらに、成長が鈍化したときこそ、社員を信じて、その力を借りる。小さなプライドにこだわらずに頭を下げる。それができるかどうかで、その会社が苦境を乗り越えられるかが決まります。
社長自らが動き回り、会社を引っ張っていく必要はありません。社長の仕事は、社員たちの力を活用できる環境をつくることです。「I work for you」のスタンスで社員をしっかり育てれば、彼らが事業を推進し、業績を上げてくれます。
2015年は、私にとって節目の年になります。1985年に社会人になりましたので「社員」としての経験が15年。2000年からは複数の企業で代表者(社長)という役割をやっていますが、これが今年で15年目です。これからは「社長」歴の方が長くなります。この本はいわば、この30年間で私自身が経験したこと、失敗したことからの学んだエッセンスを「自発的に動く社員を育てる7つの法則」としてまとめたものです。この本が、悩める社長のみなさん、未来の社長のみなさんにとって格好のヒント集になれば幸いです。
著者プロフィール:柴田励司(Shibata Reiji)
1962年東京生まれ。上智大学文学部英文学科卒業後、京王プラザホテル入社。在オランダ大使館に出向後、同社の人事改革に取り組む。1995年、マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン)に入社。2000年、38歳で日本法人代表取締役に就任。その後、キャドセンター代表取締役社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任。2010年7月より「働く時間・学ぶ時間」をかけがえのないものにしたい、という思いのもと、経営コンサルティング事業と人材育成事業を柱とする(株)Indigo Blueを本格稼働。代表取締役社長を務めている。2014年7月から東証マザーズのパス株式会社の代表取締役CEO、同年12月から雑誌「DRESS」を発行する株式会社giftの代表取締役会長を兼務。
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