実は変化や多様性に強い日本人――自分と違う考えを認める勇気を持つ:ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)
「決められた解答」以外を認めない日本の教育。みんなと同じであることを重視する教育のために個性が出せなくなっている。グローバル化やダイバーシティが進む中で、自分と違う考えを受け入れ、個性を発揮するためにはどうすればよいのだろうか。
72億分の1の役割を全うする
「大学卒業後、就職して国際ビジネスに関わっていく中で、日本が非常に心配になった」とMiwaさんは言う。例えば、2011年に日本、米国、中国、韓国の高校生に実施された「自分は価値のある人間だと思うか」という調査(注)に、米国、中国、韓国の高校生の8〜9割が「価値がある」と答えているのに対し、日本の高校生は3割程度しか「価値がある」と答えなかった。この高校生は、現在は大学生になったり、新卒で就職したりしているが、いまでもこの比率は変わらないという。
(注)「高校生の心と片田の健康に関する調査(2011年3月) 」(財)一ツ橋文芸教育振興協会、(財)日本青少年研究所
なぜ自分に価値がないと思ってしまうのか? Miwaさんは、「日本の教育に問題があると思う。良い、悪いは別にして、日本の教育は、みんなと同じであることを重視する。しかし、物事の受けとめ方には個人差がある。例えばスペイン南部の冬は、日本人には寒いが、北欧の人には温かく感じる。国籍や性別、年齢を問わず、個人差がある。もちろん、同じ日本人でも個人差がある。違っていて当たり前なのに、違っているのはおかしい、みんな同じでなければいけないという教育のために個性が出せなくなっている」と言う。
それでは、日本人は変化や多様性に弱いのか? 四季のある日本では、気候や食べ物などがどんどん変化する。宗教的にも神道と仏教やキリスト教の要素が混ざり合い、この神でなければならないという思想もない。相手と自分の違いを理解しているからこそ、「心づかい」や「気配り」ができる、何でも受け入れて対応してきたはずの日本人が、変化を受け入れられなくなっている。
「世界には72億人がいるので、自分がやらなくてもいいこともたくさんある。人には長所と短所があるのだから、長所を生かせばよい。例えば私は、スペイン語は喋れるがフランス語はダメ。だからといってフランス語を一生懸命勉強する必要はなく、フランス語が得意な人に任せればよい。この世にいる限り、それぞれに72億分の1の役割があるわけで、それを全うすればよいと思っている」(Miwaさん)。
苦手な分野を頑張るより、得意な分野に時間をかけたほうがいい。ただ、自分の短所はすらすら言えるが、長所はなかなか分からない。短所は苦労することなので分かりやすいが、長所は何の苦労もなくできることなので、気がつきにくい。Miwaさんは、「自分の長所を把握するには、多くの人と接すること。他の人と比べれば、自分には当たり前だと思っていたことが、実はほかの人には難しいことが分かり、自分の長所を把握できる」と話している。
ただ、長所を生かすためには、自分の短所を認めなければならない。「これは苦手な分野だから」と認め、自分をごまかさないことが重要になる。誰しも、自分にできないことがあるとは認めたくない。しかも、短所や苦手なことに取り組んでいる分には言い訳がきくが、長所では言い訳がきかない。真剣勝負。だから勇気がいる。
結局、何が良くて、何が悪いかという話になったとき、すべての物事には、プラスとマイナスの面がある。「人前で話すのが苦手で、地味で、暗くて……」と話す人に、それを「控えめで、おしとやかで……」とポジティブな言葉で言い換えることが効果的である。逆に、長所として認識している「明るい」という性格は、「うるさい」という表現に言い換えることもできる。全方向から物事を捉える力、マイナスをプラスに捉える思考力をつけることが重要である。
Miwaさんは、「よく講演で"変えられるものは変えていく勇気を、変えられないものを受け入れる冷静さを、そして変えられるものと変えられないものを区別する知恵を与えたまえ"という"ニーバーの祈り"を紹介する。他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。過去に起こったことは変えられないが、それをどう捉えるかは自分次第。"あいつはオレのことを理解していない"と思っても、考え方が違うので仕方がないこと。自分と違う考えが存在するということを認める勇気が必要になる」と締めくくった。
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