型に始まり型に終わる能の精神――文化や伝統を守りながらも革新性を追求:ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)
4代続く能楽の流派のひとつである梅若家。人間国宝でもある当主の56世梅若六郎氏を中心に、「型に始まり型に終わる」と言われる能の基本的な型を生かしながら、新しい表現、革新的な表現の実現に取り組んでいる。
能の基本を生かして革新性を追求
元々、能は武家のものであり表に出にくいものだった。小学校の芸術鑑賞で、「つまらないものを見た」というイメージはよく耳にする。見に行くにはハードルが高いというイメージもある。こうした背景もあり、56世梅若六郎氏はギリシャ神話を能にして、ギリシャで講演する準備もしている。
「新しい型を作ろうとしているのではなく、能の基本的な型でいかに新しいことを表現できるかに取り組んでいるのです。そのため、歩き方、歩数、間合いなど、すべて能に基づいている。葉加瀬太郎さんともコラボレーションしていますが、このときにも能のスタイルは変えず、音楽にあった能の型を取り入れています」(梅若氏)
ただしコラボレーションでは、相手の言いなりではうまくいかない。「相手と喧嘩するくらいに話し合った結果として、素晴らしいコラボレーションが完成します。新しい人たちとのコラボレーショにより、能の可能性を引き出すことができます。そのためには、古典を大切にしなければなりません」と梅若氏は言う。
新しいものとのコラボレーションにより、基本である型を大切にすることの大切さを再確認することもできる。こうした取り組みがあったからこそ、能は600年続いているのである。時代に合った能を舞い、古典の良さも理解してもらうことが重要になる。そのためには、面や装束、足袋、縫い針など、日本の文化も残していかなければならない。
梅若氏は、「今日、明日のことは、ルーティンワークであっても、必ず新しいことであるのが能の世界です。常に初めてのことであり、常に新鮮な気持ちで取り組まなければなりません。そのためには、文化を守りながら革新性も必要です。こうした思いを込めて、"初心忘るべからず"という言葉を大切にしています」と締めくくった。
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