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「働きやすさ」を追求すると、キャリアも会社もダメになるビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

「働きやすさ」は不満を減らす一因にはなるが、満足を高める決定打にはならない。能力を十分に発揮できるためには何が必要か?

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 例えば、育児など家庭の事情で働き方に制約のある従業員にも遅番や休日勤務などを求めるようになった資生堂では、それまで女性が働きやすい企業というイメージから一転したとして批判を浴び、"資生堂ショック"と呼ばれる社会現象にまでなりました。

 また従業員を大切にする経営を評価され公的な表彰を受けた中堅企業の経営者は、こんな本音を漏らしてくれました。

 「ES(従業員満足)を高めるために良かれと思って、働きやすい環境を整えてきたが、若手を中心にそれらを当然の権利として、CS(顧客満足)を二の次にしてしまう傾向が出てきている。どうしたものか頭が痛い」

 これらは、「働きがい」を軽視し、「働きやすさ」ばかりを底上げしてしまったゆえの悲劇です。「働きやすさ」を追求すると、個人のキャリアも会社もダメになってしまうのです。

 「働きがい」は古くて新しい概念です。現代では、どちらかというと、「働きがい」を重視する企業はブラック企業と同様に扱われるきらいすらあります。もちろん不当な就労環境で人を疲弊させるだけの不健全な働きがいを求める企業は論外ですが、個人の満足と成長につながる健全な働きがいこそが、今、企業に求められているのです。

 全国津々浦々、大企業から中小企業まで多くの経営者・人事責任者と会うなかで、短期的にはよかれと思った人事施策が、中長期的には現場で働く人たちの働きがいをそいでしまったと実感しています。

 また、いったん崩壊してしまった職場を立て直すのは並大抵なことではないことも痛感しています。にも関わらず、相変わらず政府や多くの企業が働きやすさや賃上げばかりに目を向ける現状に強い危機感を持ち、私はこの度『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(KKベストセラーズ)を上梓しました。

 本書では、官民あげて、働きやすさばかりを追求することで、個人の権利意識、他責が増幅され、企業経営、社会の発展が行き詰まる近未来に警鐘を鳴らしました。また、私たちが見てきた働きがいあふれるチームへの立て直しの方向性や方法を、事例満載でお話ししています。

 「働きやすさ」は、あくまで「働きがい」のための補足でしかないのです。「働きがい」実現のために、「働きやすさ」があるにすぎないという真理に一人でも多くの人に気付いてほしいと考えています。

 「働く」ことを常にテーマとして追い続けて、著者デビュー12年目、21冊目の本となります。この小さな一冊が、この国中のあらゆる職場が「働きがいあふれるチーム」に生まれ変わる一助となり、この国の働く未来を健全化させる一助になることを願っています。

著者プロフィール:前川孝雄

(株)FeelWorks代表取締役・青山学院大学兼任講師

「コミュニケーションが人と組織を変える」をスローガンにする人材育成の専門家集団(株)FeelWorks創業者。兵庫県生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートを経て、2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。独自開発した「上司力研修」「上司力鍛錬ゼミ」や「人を活かす経営者ゼミ」、「育成風土を創る社内報」などを手掛け、約300社で「人が育つ現場」づくりを支援している。ミニドラマを用いた「働く人のルール講座」や「キャリアコンパス研修」、「女性幹部リーダー養成研修」など、時代性を踏まえた先進的な研修プログラムも提供している。

2008年から続けるブログ「前川孝雄のはたらく論」は、アメブロ社長ランキング1位にもなり、年間約100本の講演・TVコメンテーターとしても活躍するなど、自らも人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者として熱く発信中。共働きのイクメンでもあり、その親しみやすい人柄にはファンも多い。

TV番組「ワールドビジネスサテライト」「サキどり↑」「ニュース シブ5時」「めざせ!会社の星」などに出演。YAHOO!「前川孝雄の人が育つ会社研究室」、読売新聞「前川孝雄のはたらく心得」など連載も多数。

著書は「上司の9割は部下の成長に無関心」(PHP)、「ダイバーシティの教科書」(総合法令出版)、「女性の部下の活かし方」(メディアファクトリー)、「年上の部下とうまくつきあう9つのルール」(ダイヤモンド社)、「部下を育て、組織を活かす はじめての上司道」(アニモ出版)、「30代はアニキ力」(平凡社)、「働く人のルール」(明日香出版社)、「勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさい」(光文社)など多数。最新刊は「『働きがいあふれる』チームのつくり方」(KKベストセラーズ)。


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