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メンタルを強くするには「ママ」を探さないことビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

「母親」と「他人」は自分で選べるが、「他者」は、選べない、わけの分からないキャラ。他者を母親か他人のどちらかに放り込もうとするとメンタルダウンする。

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上司は、善人でも、悪人でもない

 世の中には「善人」と「悪人」の2通りがいると思っている人がいます。B級映画では、善人は見るからに善人、悪人は最初から悪人っぽいのです。実際には、善でも悪でもない人が世の中にはたくさんいます。

 1人の人間の中は、もっと複雑です。善人なる要素と悪人なる要素が両方あるのです。そもそも世の中の常識が動けば、善と悪は入れかわります。立場の違いでも、善と悪は分かれます。

 お店の立場から見た善と、お客様の立場から見た善とは違います。人間的な善もあれば、商売的な善もあります。善と悪は、単なる二元論ではないのです。

 小さい世界で生きている人は、「善人でなければ悪人。悪人でなければ善人」という解釈になります。会った人に対して、常に「善人か悪人か」というところから入るのです。

 「いいね!」と承認してくれた人に対して、「あの人はいい人だ」と思います。「いいね!」が99あっても、1回のレスがないと、「なんと、あの人は意外にも悪人だった」とショックを受けるのです。最初から「いいね!」を押していない人は恨みません。「あの人は悪人」と決めているからです。

 一番つらいのは、一度「いいね!」を押してくれた人を善人と思うことです。ある時、忘れたのか、忙しかったのか、いろいろ事情があって、「いいね!」が返ってこないことがあります。その瞬間、「あの人は最低だ」「私はあの人から見放された。また天涯孤独だ」と思うのです。

 これは本人の中で勝手に揺れ動いているだけです。状況は何も変わっていないのに、自分自身があたふたして疲れていくのです。

 すべての人の中に善と悪があるのだと思えば、何もショックは受けません。ムダなエネルギーの消耗をなくすことで、メンタルは強くなります。メンタルの弱っている人は、喜怒哀楽のアップダウンが大きいのです。

 喜んでいる時にメチャクチャ喜んで、1回「いいね!」がなかった瞬間に、ドーンと落ち込んでしまうのです。善人と悪人で、分けないことで、メンタルが強くなります。

中間の味方を、切り捨てない

 優しい上司に「この人が母親に違いない」と、すり寄っていくと、どこかで母親でないことに気づきます。おっぱいを飲ませてくれないのです。その瞬間、最初から「他人」と思っている人より、もっと嫌いになります。自分のことを「天涯孤独」「母なき子」と感じます。

 こういう人は、上司に限らず、すべての人間関係において、いい人を見ると、「あなたは私のお母さんじゃないですか」と、すり寄っていきます。それが母親ではなかった時に、「あの人、最低」と、怒りの対象になるのです。

 自分自身も落ち込みます。そのショックでエネルギーを消耗します。本来、関係「99」の人は強力な味方です。それを切り捨ててしまうと、味方はどんどんいなくなって、さらに孤立します。

 関係「1」の人は、捨ててもそれほどマイナスにはなりません。関係「99」の人を自分から切り捨ててしまったら、こんなに疲れることはありません。

 例えば、ある読者が、その作家の本を読んで、「この人は私の気持ちを分かってくれる」と思い込みます。作者に手紙を書くと、なんと、返事が来ます。「やっと母親にめぐり合えた」と思っていたら、次に手紙を書いた時に返事が来ないのです。

 ここで「裏切られた」「母親に捨てられた」という恨みになって、ネットで悪口を書くという展開になるのです。実は、ネットで悪口を書かれている人は、書いた人に優しくしている人です。例え優しくしてくれても、どこまでいっても母親ではありません。

 母親は、1人いればそれでいいのです。まず、「母親」と「上司」の区別をつけることです。世の中には「他者」という存在がいると分かるだけで、精神的にラクになります。

 「この人は、他者のわりにはけっこう優しいな」と感じられます。最初から期待感が強いと、マイナスしか感じなくなるのです。社会で、「ママ」を探さないことでメンタルは強くなります。

著者プロフィール:中谷彰宏

1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。

【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー、ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。

著作は、『メンタルが強くなる60のルーティン』(PHP研究所)など、1,000冊を超す。


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