チャンスをつかむプレゼン:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
企画力は、新人もベテランもまったく差がない。実現できるかどうかには圧倒的な差がある。その差は何か?
本来、聞き手を説得するのは、スクリーンではなく話し手です。スティーブ・ジョブズも、プレゼンの失敗を自分で認めたことがあります。それは、スクリーンに映し出したビル・ゲイツをよけたことです。これは、ビル・ゲイツの勝ちを意味します。しかも、ビル・ゲイツはスクリーンに大きく映っていました。
「例えビル・ゲイツがスクリーンに大きく映っても、それを遮るように前に立ち、自分の体にビル・ゲイツが映っているなら自分の勝ちだった」というのが、スティーブ・ジョブズが反省して出した答えです。
よくスティーブ・ジョブズのプレゼンの形だけをマネする人がいます。一見、スティーブ・ジョブズのプレゼンは何げなしにしているように見えます。実際は、多くの失敗を乗り越え、試行錯誤を繰り返してあの形になったのです。
ホワイトボードに近づきすぎると、自信なく見える
今、パワーポイントが増えている中、ホワイトボードを使う効果は大きいです。パワーポイントは、どんなに文字をあとから追加してスクリーンに表示されても、結局は家で準備したものです。聞き手とは一緒につくっていません。
ホワイトボードは目の前で書くので、聞き手と一緒につくられたものです。例えば、学校の先生の授業もプレゼンです。先生が「これ、どう思う?」と聞いて、生徒が答えたことをホワイトボードや黒板に書いた瞬間に、話し手と聞き手が一体になります。聞いている側は自分の意見が書かれたと思うからです。
聞き手の言った答えがくだらないことでも、ホワイトボードに書くことによって「これであなたとは味方だよ」となります。いまいちだなというアイデアもホワイトボードに書きましょう。
これは、ブレストで起こります。「もっとない?」「今、ここに書いたのと似てるね」と言って書いてもらえないと、アイデアを出した人はガッカリします。チャンスをつかむ人は、似ていることも全部書きます。「自分の意見が書かれている」と思った時点で、そのアイデアの賛成派になります。
これがパワーポイントではできないことです。僕は「黒板芸」と呼んでいます。パワーポイントがこれだけ多く使われている時代に、講演や講義でホワイトボードを使っています。
これは、駿台予備校の講師の先生から学んだことです。
予備校の先生は、黒板芸が圧倒的にうまいのです。英語の先生でも、事前につくったパワポで授業をするよりは、生徒の目の前で黒板に書く授業のほうが面白いです。
ましてや企画会議では、「自分の言ったアイデアがホワイトボードに書かれること」が大切です。
最終的に自分のアイデアを通したいと思う時は、ホワイトボードに向かう立ち方で勝負が決まります。チャンスをつかめない人は、ホワイトボードに近づいて立ちます。チャンスをつかむ人は、ホワイトボードから最も離れたギリギリのところに立ちます。
基本は、聞き手にお尻を向けないことです。聞き手に背中を向けるのは、説得力が弱くなります。聞き手を見ながら、ホワイトボードから最も離れた位置に立って書けばいいのです。
これこそが会場全体を支配でき、説得力のあるリーダーのホワイトボードの書き方なのです。
著者プロフィール:中谷彰宏
作家
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー、ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。
著作は、『チャンスをつかむプレゼン塾』(学研パブリッシング)など、1,000冊を超す。
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