物流ビジネスにおけるRaaSの可能性:視点(2/2 ページ)
ロボティクス、AI、IoTといった次世代テクノロジーの進化と、活用の拡大は、ロジスティクスの根幹を変えようとしている。
量産化を成し遂げられれば、生産コストの大幅な縮小も可能だろう。フォークリフトが年百万台超生産されていることを考えると、物流ロボットの潜在市場も決して小さくないはずである。
ロボットの使用は物流センターの中に限られるものではない。極端にいえば、「人が手でモノを運んでいる作業」を全て代替できる。工場や店舗、ホテル、オフィスビルなどでの使用も多分に想定される。
アタッチメントを付け替えることで、「昼間は料理のデリバリー、夜間はホテルでルームサービス」「平日は工場で出荷作業、休日は店舗で巡回作業」「真夏は清涼飲料、クリスマス前は玩具の物流センター」というように、繁閑に応じて使用場所を変えることも考えられる。より汎用的なロボットを開発し、さまざまな場所での使用を可能とすることができれば、量産効果をさらに高められるだろう。
3、RaaSの可能性
将来、汎用的なロボットがさまざまな場所で使用されるようになったとき、「モノを運んでほしい会社」にロボットを提供するサービスが開始されるはずだ。必要なときに、必要な台数を利用できるのだとすれば、ロボットは「買うもの」ではなく「利用するもの」になる。
パートやアルバイトのように、変動費的な活用が可能となる。パートやアルバイトに歩合給が存在するのと同じように、宅配個数や売上増加効果といった成果に応じて費用を支払うような料金体系の構築も考えられる。(図A参照)
要するに、量産化や汎用化の先には、「RaaS(Robot as a Service)」の世界が広がっているのである。さまざまな場所で使用されているロボットを通じて、その周辺情報を広く吸い上げることができれば、その場所でのオペレーションを効率化するだけではなく、在庫の配置や入出荷量の見直しといったサプライチェーン全体の最適化に資するソリューションを提供することも可能になる。
ロボットを開発・製造することよりも、モノの移動に関するソリューションを提供することに価値の源泉がシフトするわけだ。「ロボットの事業化を実現すること」を当面の戦略目標としつつも、「RaaS」の時代を見据えた未来のビジネスモデルを創造し、以て適切なタイミングで「コト売り」への転換を果たすことが肝要といえるだろう。
著者プロフィール
小野塚 征志(Masashi Onozuka)
ローランド・ベルガー パートナー
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、都市銀行を経てローランド・ベルガーに参画。ローランド・ベルガー東京オフィスにて、製造業を中心にコンサルティング業務に従事する傍ら、採用・教育・リテンション・評価をつかさどる社内活動のリーダーを務める。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革等を始めとする多様なコンサルティングサービスを展開。本年3月、日本経済新聞出版社より『ロジスティクス4.0 − 物流の創造的革新』を上梓。
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