検索
連載

「多産多死」による新規事業開発視点(2/2 ページ)

新規事業開発は、ある種「確率論」である。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

 もちろんそれ以外にも、自社のアセットや強みを公開し、スタートアップにそれらを活用した提案をもらって、オープンイノベーションで新規事業を膨らませるやり方は少しずつ広まってはいるが、いかんせん待ちの姿勢が多い。日本は海外に比べてもスタートアップの数が相対的に多いとはいえず、こちらからよい化学反応を起こしうるスタートアップを能動的に探索する必要がある。世界のVCの投資先を検索して、有望な企業を探索していくことが肝要だ。

2、高速にPoCを回す

 よいアイデアをたくさん生み出しても、初期投資がそれなりにかかるゆえにためらったり、必要十分なリスクを嫌悪したりなどの傾向はまだ根強い。事業を始める前でも、始めた後でも、よく起こる障壁をまとめている。(図A参照)


新規事業化への障壁

 なかでも注目すべきなのは、外の力を活用しなければならない場面で、お互いの共通言語を築けなかったり、相手の力を適切に目利きできずに、内外連携がうまくいかなかったりする点は重大なポイントとして挙げることができる。

 いずれにせよ、いきなり大きく始めるのではなく、潜在顧客を交えて小さく試していく実証実験(PoC) を数多くトライしていく必要がある。現在では、PoCを比較的リーズナブルに実施するプレイヤーは多くなっている上、中でもそれがおもしろいアイデアだと考えるプレイヤーはリスクシェアリングパートナーとして、支援してくれるところもある。リスクシェアリングの手法はさまざまだが、一部エクイティを投じてともに育成する方法もあれば、プレイヤー側で事業を初期的に立ち上げてうまく回り始めたら売却するという手法も存在する。

3、おわりに

 多産多死は労力もかかるし、マルチタスキングの極みであるため、相応のキャパシティが必要である。しかし、内外連携によって新しいものを生み出すことが主流である今、避けては通れないと考えるべきだ。コミュニケーションコストをできる限り抑え、業務効率を飛躍的に向上させるツールもどんどん出てきている。「働き方改革」で単に効率化を目指すのではなく、多産多死の取り組みの中で、既存業務を効率化しながら新しい目のあるわくわくする新規事業量産にその余力を大きく振り向けられる組織を目指す。

 不確実性の高い現代において、そのような取り組みが求められているのではないか。

著者プロフィール

中野大亮(Daisuke Nakano)

東京大学法学部を卒業後、米国系戦略コンサルティングファームを経て、ローランド・ベルガーに参画。製造業、スタートアップ、鉄道・航空などを中心に幅広いクライアントにおいて、事業戦略、成長戦略、全社ポートフォリオマネジメト、M&A/PMIなどのプロジェクト経験を豊富に有する。近年ではそれに加え、未来構想センターヘッドとして、2030〜2040年におけるメガトレンドを踏まえた未来構想・長期ビジョン策定プロジェクトや、新規事業立案についてスタートアップと連携した支援サービスを行っている。ローランド・ベルガー自身におけるオープンイノベーションも主導。


前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る