第20回:これからの経営者・リーダーが、組織を率いるために発揮すべき力、使うべき言葉:マネジメント力を科学する(2/2 ページ)
経営者やマネジメント、リーダーには2つの「描く力」が必要だ。
テーマ・ドリブン、ビジョン・ドリブンで、「〇〇さんと一緒にこのプロジェクトをやりたいな」と思ってもらうことが非常に大事です。それがないと、一応仕事をしているかもしれないけど、生き生きとした状態にはならないでしょう。
ですから、トップがより一層、メンバーたちに語りかけて、自分の思いや考えをきちんと伝えることがすごく重要です。
そして経営者、上に立つ人は、部長や課長など中間管理職が「良い考えに共鳴してくれるようなチームビルディング」をする必要があります。そこが違う方向を向いていたら、そこから先のメンバーも違うことを感じてしまいますから。
企業内で使う「言葉」の重要性
経営者JPとしてクライアント企業各社を支援する中で、嘘偽りなく、その企業の経営や部門の考えと共鳴できるかどうかは非常に重要です。「ぜひそれを御社で成し遂げてほしい、社会的課題を御社で解決してほしい」と私たちが心から思えるかどうかで、そのクライアントとの関わり方がほぼ0:100で決まります。
そうしたテーマ性が見えない企業は、私たちも高い熱量で関わることができないので、積極的には関わっていません。
エグゼクティブサーチ事業(経営幹部の採用・転職支援)では、ある意味「この会社はこういうふうにしていきたいんだな」ということを、転職候補者に熱量をもって伝えるのが私たちの仕事でもあると考えています。
これに関連して松岡さんは、「会社の中で、どんな言葉が使われていますか?」という問いを発します。
これは「社会構成主義」といって、「人が何かについてどういう風に言っているかによって、その組織や企業の文化は作られていく」という考え方です。
もしその会社の人が違う部署のことを「あいつらさ……」と話しているなら、平たく言うとその会社は「組織の壁」だらけなのです。
例えば、協力会社のことを「業者」呼ばわりする企業。「あいつら」とか「いいんだよ、金さえ払っとけば」とか、こういうことを平気で言う会社は、協力会社の力を最大限に引き出すことができません。
そういう言葉を使われている協力会社は、その会社が求めるギリギリ最低限のことしかやらないでしょう。期待値を超えることは絶対にやりません、というか、やりたくありません。
一方で良い会社は、協力会社の力を期待値以上に引き出します。
本当の意味で心からパートナーとしてお願いしている、あるいは協力会社側も受ける側の立場としてクライアントの真のパートナーとして役に立とうと心から思っている。こうなる前提に、会社が協力会社を「どう読んでいるか」「どのようなスタンスで会話しているか」があります。
昨今、ビジネスの進め方がプロジェクト化していることと同期して、社内外の壁がどんどん薄くなってきています。そのような中で、協力会社だけでなく、お客さま、他の部署、上司など、それぞれの対象物に対して社内でどんな言葉を使っているかを集めてみるとすごくおもしろいです。
まさにそこにこそ、自社の企業文化が現れるのです。
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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