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AI活用で世界の内視鏡医療の向上に貢献したい――AIメディカルサービス 多田智裕CEOデジタル変革の旗手たち(2/2 ページ)

内視鏡の画像診断を支援するAIが世界を変えようとしている。日本でこそ内視鏡で早期発見が可能な消化管がんだが、世界では多くの患者が命を落としているのが実情だ。内視鏡AI検査でがんの見逃しゼロを目指す医療ベンチャー、AIメディカルサービスの取り組みについて、ITmediaエグゼクティブ プロデューサーの浅井英二が話を聞いた。

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 gastroBASEは、内視鏡検査を実施した画像を専門医が確認をし、見逃しがないか、検査が適切に実施されているかを評価し、内視鏡検診技術と診断能の向上・標準化を支援する位置づけのクラウドサービスだ。誰でも使えるシンプルで分かりやすい操作性が最大の特長。クラウドベースで専用システムが不要なので、インターネットに接続できればブラウザで容易に利用することができる。検診情報や撮影した検査画像を問診票とともにクラウド上に保管し、安全に管理することも可能。クラウドなので、いつでも、どこでも2次読影を行うことが可能になる。


胃内視鏡検診と2次読影のデータを共有できるウェブサービス

 「1次検診においては、従来の検査用紙のやりとりやデータの受け渡し作業などが不要となり、データ転送の効率化、データ紛失リスク、移送時間の削減などが期待できる。市町村も、これまでは紙ベースで国に報告書を提出することが必要だったが、クラウド上にすべてのデータが保管されているので、結果を一括出力することができ、報告作業を効率化できる。将来的にはAIを搭載し、より質の高い検診を行うためのサポートを強化する」(多田氏)

内視鏡AIで、日本は世界的リーダーとしてのポジションを確立

 インターネットを誰でも使えるようにしたのがWebブラウザであることはよく知られている。なかでも画像も同時に閲覧できる初のブラウザとして1993年に登場したNCSA Mosaicのインパクトは大きかった。NCSA Mosaicとその後、Netscape Navigatorを開発したマーク・アンドリーセン氏は、「Software Is Eating the World(ソフトウェアが世界を飲み込む)」という言葉を残しているが、その言葉のとおり、この世界は約30年でハードウェアの時代からソフトウェアの時代へと変化した。

 「今日のインターネット時代を予測できていれば、スマートフォン向けのアプリの会社を作ることに何のためらいもないでしょう。それと同じで、AI活用はすでに起きている未来であり、2030年には29兆円市場になることが予測されている。医療分野でAI活用を推進するAIMを設立することになんのためらいもなかった。医者とAIが一緒に診断するほうが、よりよい診断ができることに間違いはない」(多田氏)

 AI活用の成否はデータが鍵を握っているのは言うまでもない。日本が内視鏡AIの世界的リーダーとしてのポジションを確立しており、市場をリードできたのは、質量ともに最高水準のデータを手に入れたからだと多田氏は話す。どの企業においてもかなりのデータを蓄積しているが、そのデータを使える形にすることは大変な努力が必要だ。セキュリティに関しても、個人情報保護法だけでなく、臨床研究法、薬機法などさまざまな法令を順守する必要がある。

 多田氏は、「われわれは100を超える医療機関の看護師、医療事務、内視鏡医、審査委員会など、1件1件まわって数十万件のデータを集めてきた。AI活用はデータ収集に投資する覚悟が問われる。約70年間、内視鏡医療の発展に貢献してきた最先端の病院とオリンパスおよび富士フイルム、HOYAが内視鏡を世界に展開し、シェア98%を実現した歴史がすべてだ。先人のとてつもない努力が今、実を結ぼうとしている。内視鏡AIで世界のリーダーになれることは間違いないと確信している」と話している。

聞き手プロフィール:浅井英二(あさいえいじ)

Windows 3.0が米国で発表された1990年、大手書店系出版社を経てソフトバンクに入社、「PCWEEK日本版」の創刊に携わり、1996年に同誌編集長に就任する。2000年からはグループのオンラインメディア企業であるソフトバンク・ジーディネット(現在のアイティメディア)に移り、エンタープライズ分野の編集長を務める。2007年には経営層向けの情報共有コミュニティーとして「ITmedia エグゼクティブ」を立ち上げ、編集長に就く。現在はITmedia エゼクティブのプロデューサーを務める。


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