ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術

怒ったって良いじゃないか――リーダーは怒りをエネルギーに転じよ(1/2 ページ)

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入社1年目で頭角を現す人、沈む人

 最近、気になっていることがある。それは職場で「感情を表すこと、特に怒りの感情を表すことは悪いこと」との認識が定着していることである。職場で怒鳴ったり、声を荒げる管理職は、絶滅寸前である。部下には冷静に注意したり。叱ることで指導し、怒ってはいけないのが、大きな流れになってきている。しかし、果たして、それで良いのだろうか。怒りの感情が消え、冷静に論理的に物事が進むことが、現代の日本企業の競争力や活力の源である闘争心を奪った面もあるのではないだろうか。

 10年ほど前までは、機嫌が悪いと怒鳴り散らす上司がいた。周囲もそれを認め、部下にとっては上司の顔色を伺うのもひとつのスキルであった。

 今、環境が変わり、部下、特に若い部下を持つ管理職にとっては面倒な時代と言える。コーチングが導入されてから、感情を表に出して指導するよりも、相手に考えさせ、納得させよという育成法が定着してきた。

 パワハラも脅威で、部下から訴えられれば、自分のキャリアに影響するだろうから、部下に甘くなるのは当然である。

 また、現代の若者のハートが柔なことも影響している。大事に育てられ、入試やクラブなど学生時代に競争を経験していないと、ちょっとした叱責でも傷つくことがあり、精神的な病気になって退職されても困るし、自殺でもされたら、こちらの人生も終わってしまう。

 しかし、だからと言って、怒りの感情を抑えてばかりでもいけない。恐怖や怒りの感情はマイナスの面もあるが、危険察知や身を守る本来人間に必須の感情だからである。

 電車で足を踏まれて怒るのは意味がないが、皆の前でバカにされたり、辱めを受けたり、手ひどい裏切りを受けたら、「この野郎、今に見とけよ」と闘争心が湧いてくるのは当然で、その感情をエネルギーにして反撃すべきである。この気持ちを企業だけでなく、日本全体で失いつつあるように思えてならない。

 もちろん、国民全体がヒステリーを起こせば軍事国家になる危険性を秘めているが、グローバルな競争をしている企業にとって、全員が冷静に受け止めてばかりでは、いつの間にか「仕方がない」と諦めるクセや社風が定着してしまうのではないかと心配している。

 ビジネスは基本的に理性や論理で進めるが、それではブレークスルーは生まれ難い。スティーブ・ジョブスがiPhoneを作ったとき、部下が「これだけの部品を搭載すると厚さが2センチになります。」「世界中から部品を調達するので納期は2年後になります。」「価格は10万円です」と論理的に説明したら、彼は部下に何と言うだろう。

 「そうか、仕方がないな」と納得してしまえば、iPhoneは生まれない。「ふざけるな、1センチ以内の薄さで、納期はこの秋、さらに価格は5万円以下だ。」と彼の理想に近づけようと怒鳴りまくるはずである。かつて世界を席巻した日本の新製品や難事業も、ジョブズのようなリーダーの熱い思いから転じた怒りがエネルギーになっていたのではないか。

 最近、空港で経験した出来事だが、アジアの男性がカウンターで母国語でで大声でまくし立てていた。すると、その便は満席にも関わらず飛行機に搭乗することができた。確かに行為自体はわれわれからするとみっともなかったが、彼は欲しいものを手に入れた。新興国のキャッチアップは、技術の面もあるが、目的に向かう感情のエネルギーも日本より大きいと感じた瞬間であった。

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この記事の著者

山口伸一
山口伸一

株式会社ラーニングモア 代表取締役 早稲田大学理工学部卒業後、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA) 森永就業入社、名古屋支店で営業の実務を経験後。本社でマーケティングと物流の実務を担当。 90年に住友銀行子会社の住友ビジネスコンサルテイング(現SMBCコンサルティング)入社。赤字だったセミナー部門の企画、運営、販売促進の業務を一手に担当。翌年、黒字化を果たす。以来、ビジネスセミナーを順調に拡大し、業界下位からトップクラスへの躍進に大きく貢献した。多くのヒットセミナーを発案し、大勢の有名講師を発掘、育成したプロデューサーとして実績を持つ。10年には、銀行系セミナー会社初の「定額制クラブ」を立ち上げ、年間700本のセミナーを通して中堅中小企業の人材育成に奔走する。研修講師としても、分かりやすく、実践的な内容にファンが多い。13年、退職し、初のセミナー会社のコンサルティングを業務とする株式会社ラーニングモア設立。 趣味は映画、読書(ビジネス書、小説からコミックまで)、食べ歩きなどインドア派。ビートルズのファン。映画は年間300本以上を観ることを目標としている。唯一のスポーツは、ジムで週に一度、5キロのランニングと水泳、さらに毎日、1万歩を歩くことを日課としている。 著書「入社1年目で頭角を現す人、沈む人」ぱる出版

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