視点
新興国における破壊的イノベーション(4/4 ページ)
また、日本でできていないことをアジア発でいち早く試し、それを日本に逆輸入することで、日本における先進領域での事業機会も拡大することが可能になる。そのためには、日本企業も新興国ビジネスの考え方や行動様式を大きく変えていく必要がある。(図D)
経済成長や安い労働力を背景とした従来型の新興国ビジネスから、未来構想型の新興国ビジネスへシフトしていく。先進国をモデルにした事業展開ではなく、その国、産業に合ったまったく新しい未来を描くことからスタートする。その際に、できるだけ多くのステークホルダーが「うれしい」と思う未来を描けるかが、未来構想実現への近道である。その未来構想に向かって必要な機能、事業を、スピード感を持って一気に立ち上げる。ある程度のサイズ感のある取り組みを進める。ただし、単に資金を大量投入して市場を取りに行けばいいのではなく、いかに短期間で目指すべき姿に近づけるかに知恵を使う。それらを実現するために、自前主義からは脱却する。未来構想に共感する力のある仲間をいかにつくるか。特に政府を巻き込んだ取り組みは、未来構想実現の確度を上げる。
例えば、東南アジアで日本企業のシェアが圧倒的に高い自動車業界を事例にとれば、ぜひ日本の自動車メーカーや関連企業が、東南アジアにおける将来のあるべきモビリティ環境を描いてほしい。政府にとっても人々にとっても自動車メーカーにとってもライドシェアプレイヤーにとっても鉄道やバスといった他の交通プレイヤーにとってもメリットがある新しい次世代モビリティの世界。基本的に新興国の都市交通インフラは脆弱であり、品質も悪く、渋滞も激しい。加えて郊外部では移動手段が極めて限られる。ライドシェアプレイヤーが出てきて格段に便利になったが、さらにその先を描く必要がある。
人々(もしくはモノ)の「移動」という観点で見たとき、それぞれの都市がそれぞれの課題を抱え、阻害しているボトルネックが多数存在している。それらを効率的かつ安価で短期間に取り除く新たなモビリティサービスを創り、人々やモノの「移動量」を増やすことができれば、間違いなくその都市・国の経済は活性化する。移動量を短期間で増やすモビリティの世界の実現は、経済成長を早めるだろう。そういったことを真剣に考え仕掛けていく企業が出てきてほしい。
半年後、1年後の東南アジアは、また大きく変わっているだろう。未来構想を描き、一刻も早くこの市場にコミットしていくことが、日本企業が今後、東南アジアで主導権を握ることができるかどうかのカギになる。ぜひ日本企業の技術力・構想力を結集し、新興国のDisruptiveな産業発展に貢献してほしい。
Copyright (c) Roland Berger. All rights reserved.
視点
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「対策している」と「守れている」は違う - 防御力を経営に見せる富士通のサイバーセキュリティ戦略
-
2
5年で辞める予定の元数学青年が「しなやかな心とぶれない軸」でCISOへ - 富士通 太田氏
-
3
「上司の9割は部下の成長に無関心」時代に人を育てる3つの鍵
-
4
貨物の搬送車両で自動運転「レベル4」 福岡空港、国内3カ所目
-
5
フィジカルAI実用化の壁をどう越えるか──経産省・PFNらが語る、"5~8桁足りない"学習データの現在地
-
6
パレスホテル箱根が2029年秋開業へ、国立公園内にマウンテンリゾート誕生
-
7
セキュリティは「使えてなんぼ」 認証との偶然の出会いから22年 - NTTデータ 星野氏
-
8
「話を聞いてもらえない」のは、内容のせいとは限らない――伝わる人が押さえる第一印象
-
9
ロボットや技術のフル活用で人手不足を乗り越えろ AIに頼らずに奮闘する現場を訪ねて
-
10
第55回:「誰が言ったか」で判断していないか──SNS時代、エグゼクティブに必要な「空気に逆らう力」
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー