視点

PMOのポテンシャルを最大化する~いかにして変革プログラムを成功に導くか~(1/2 ページ)

PMOの成功確率は16%

 大胆な企業変革に乗り出す時、多くの企業では、PMO(Project Management Office)が組織される。ここでいう企業変革は必ずしも再生局面に限らない。ドイツ語圏15業種288社を対象としたローランド・ベルガーの調査によれば、戦略危機、収益危機、財務危機といった戦時に組成されたPMOは全体の43%、むしろ平時組成型が過半を占める。PMOは、企業変革を成功に導く不可欠な組織として、企業活動に定着している。

 PMOの役割は、変革プログラムを先導し、実行段階に頻発する障害を排除すること。しかし、PMOが期待通りの価値を発揮するケースは極めて少ない。先の調査によれば、当初計画を達成できたPMOはわずか3%、計画達成度75%を「成功」と見なしても、その割合は16%にとどまる。変革に「想定外」は付きモノとはいえ、実に41%のPMOが計画達成度50%未満に終わっている。

PMOを成功に導く主要因

 先の調査から、PMOの計画達成度と相関の強い要因を抽出しよう。(図A参照)第一に「経営陣のコミットメント」。優先度の低い企業の計画達成度が33%強にとどまる一方、高い企業の達成度は67%超。スピアマンの順位相関係数(ρ)は0.99に達する。しかし現実には、経営陣自らリーダーシップを取らず、管理部門や機能部門長にPMOを丸投げするケースが往々にして見られる。

図A:PMOを成功に導く主要因

 次に「ITツールの活用」。プロジェクト管理にITを積極活用する企業の計画達成度60%に対し、消極的な企業の達成度は38%(ρ=0.96)。ITの効用は明白だ。それでも、PMO組成段階で最適な ITツール選定に注力するケースは少ない。結果、プロジェクトは時代遅れの自社製管理ツールに翻弄(ほんろう)される。

 「支援期間の長さ」も大切だ。通常、PMOはおよそ5カ月の組成期間の後、20カ月超にわたって変革プログラムの支援にあたるが、支援期間1~3年のPMOの計画達成度が71%に達する一方、1年未満のPMOの達成度は52%(ρ=0.84)。より具体的には、最低でも1.5年以上継続することの重要性を示している。PMO組成段階のモチベーションをいかにして実行段階以降も維持できるか、が計画達成度を左右する。

 「外部の活用」も興味深い。相関は決して高くないが(ρ=0.52)、よく見ると、100%外部依存することの危険性と同時に、50%~75%の外部人材をPMOに導入することの有効性を示している。「他力に頼るな」は半分正しいが、半分誤りだ。

経営環境に応じた成功要因の違い

 企業変革の目的は多岐にわたる。事業モデル革新、組織文化変革、収益力強化、全社リストラクチャリング。変革の背景もさまざま。一つとして同じモノはない。直面する課題の複雑性や緊急度に合致したPMOが必要だ。全体の57%を占める平時組成型PMOと、43%を占める戦時組成型PMOでは、重視すべき要因も違って然るべきだろう。

印刷する
SNSでシェア

視点

この連載の記事をもっと見る

この記事の著者

田村誠一
田村誠一

外資系コンサルティング会社において、各種戦略立案、及び、業界の枠を超えた新事業領域の創出と立上げを数多く手掛けた後、企業再生支援機構に転じ、自らの投融資先企業3社のハンズオン再生に取り組む。更に、JVCケンウッドの代表取締役副社長として、中期ビジョンの立案と遂行を主導、事業買収・売却を統括、日本電産の専務執行役員として、海外被買収事業のPMIと成長加速に取り組んだ後、ローランド・ベルガーに参画。

関連記事

ITmedia エグゼクテブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら

ぜひこの機会にお申し込みください。

入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。

入会条件:
上場企業および上場相当企業の課長職以上

※入会は無料です

エグゼクティブコンテンツ

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia エグゼクティブ SNS

X @itm_executiveをフォロー

インフォメーション

注目情報をチェック

ITmediaエグゼクティブをフォロー