視点
生活者起点で捉えるスマートシティ3.0~スマートシティからサステナブルシティへ~(2/2 ページ)
指標別に見ると、促進基盤の評点は総じて高く、適用分野の評点が低い。適用分野の中では、行政サービスやモビリティ領域が先行し、健康/医療、施設/住宅、教育分野に遅れが目立つ。構想設計やIT基盤導入、提供者起点の実証実験偏重では、都市機能の最適化はおぼつかない。今こそ実行6つの適用分野を有機的に連携させ、生活者起点の持続可能な都市づくりに真正面から向き合うべきだ。
戦略実行力にも大きなばらつき
課題は、適用分野の包括度の低さにとどまらない。戦略は実行されなければ無意味だ。戦略実行力を、能力(導入責任の明確化)、範囲(旗艦プロジェクトの導入分野)、進度(旗艦プロジェクトの進捗)、管理(モニタリングの仕組み)の4項目で評価すると、SCSI上位15都市ですら、及第点は8都市にとどまった。(図A2参照)
先行するのは、ウィーン、シンガポール、ロンドンの3都市。ウィーンはSmart City Vienna Agencyの指揮下、デジタル医療、スマート信号、デジタル行政など多岐にわたる旗艦プロジェクトが進行し、公共データのオープン化でも先行、各プロジェクトの個別進捗に加え、CO2削減といった長期目標の進捗も定量化している。
シンガポールは、「スマート国家」構想にかかわるリー・シェンロン首相の発言(“シンガポールは世界で傑出した都市として、われわれの生活をより快適かつ持続可能なものとし、想像も超える未来を作り出す”)に全てが凝縮されている。
ロンドンはCDO(最高デジタル責任者)を任命、スマート道路の導入や都市データエコシステムの構築に注力するとともに、各プロジェクトの進捗をオンラインでリアルタイムに公開している。
高まる民間企業への期待
スマートシティ戦略の導入難易度は高い。都市ごとに目指す場所も道筋も異なり、先行事例の模倣は役に立たない。実現に多くの時間と資金を要するうえ、規制が行く手を妨げる。急激な変化は、市民や利害関係者の抵抗を引き起こす。小粒の実証実験でお茶を濁したくもなる。
しかし、補助金頼みの実証実験に持続性はない。官民双方が生産年齢人口3割減社会に向き合い、都市を再創造する覚悟が必要だ。日本には、鉄道網の発達とともに形成された独自の都市OSが存在する。官の全体構想力、民の事業モデル構築力、両者をつなぐ鉄道事業者の都市OS創造力を総動員すれば、包括性と実行力を伴った、スマートステーションを中心とするサステナブルシティを実現できるはずだ。
Copyright (c) Roland Berger. All rights reserved.
視点
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「CISOは1人の経営者たれ」――ログの先の人を思う、LayerX CISO 星氏
-
2
「人間洗濯機」が高齢者施設に 福祉の現場に万博技術導入 人手不足解消や産業成長に期待
-
3
高島屋・村田善郎社長 挑戦続けるアバンギャルドな百貨店 ベトナムや新型SCに重点投資 My Vision
-
4
なぜコーポレートITはコスト削減率が低いのか――既存産業を再定義することでDXを推進
-
5
ITmedia エグゼクティブ勉強会スケジュール
-
6
どの区立中からも通えるオンライン将棋部発足 休日はリアル、プロ級も指導 東京都大田区
-
7
森ビルが挑む、DXを通じた「ヒルズライフ」の充実とコア領域の内製化
-
8
第52回:「管理」する時代は終わった──AI時代、マネジャーに残された本当の仕事とは?
-
9
本田技研工業のDXはボトムアップとトップダウンで“Hondaらしく推進”
-
10
公共交通インフラの使命を軸に、事業継続への攻めと守りを大胆に実行する - JAL 鈴木氏
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー