「報告の仕方は、企業人の生命をも左右する( 悲しいかな! 老婆と同レベルの管理者の話し方 )」:生き残れない経営(3/3 ページ)
「報告の仕方」は部下から上司へ適用されるだけのものではない。上司から部下への指示にも、顧客に対する説明にも、幹部・経営者がさらに上に対した時にも、あるいは部下はもちろん、トップ・経営者など企業人が顧客や多数の聴衆を前にした時にも応用される手法である。
では、最も効果的な報告の仕方はどうあるべきか。
まず、究極の報告の仕方を示そう。「結論を一言で述べる」、(これだけでいいが、敢えて加えるなら)次に、その背景や理由を1、2、……と箇条で簡潔に述べる。これに尽きる。
もう少し解説を試みよう。
1、大前提として、相手に自分の考えを伝えるのだという「強い意志」を持つこと。「執念」と言ってもよい。それが、相手に気迫となって伝わる。前掲のV・ハワード曰く「自分がそうなろうと決心する分だけ、他人に対して強力になり得る」のだ。
2、まず、目的を明確にする。(1)単なる報告か、相手から何を引き出すのか、許認可を得るのか、許認可手続きの承認を得るのかなど。(2) そして、その目的を果たせない時は、次に代わりに何を狙うか。目的を果たせない相手の理由を聞き、宿題を取り付け、合わせて、相手の興味、次回アプローチのタイミング・方法などを探る。タダで終わらない。
3、攻め方を組み立てる
(1)攻め方を組み立てる前に留意する点として、
- 今回のテーマについての相手の興味(論理、感情両面から)を探っておく(例えば前掲のS商会のケースで、常務がIT推進派か、とにかく経費節減指向派か、あるいはS商会好意派かで対応が変ってくる)。相手が上司・部下・男・女・顧客かなどでも、対応が異なる。報告に許される時間も、考慮する。
- 1つの視点に捉われない、「複眼思考」で多角的に検討する(S商会の例で、ついでに他の取引先とのオンライン連携も視野に入れる、など)。
- オリジナリティを取り入れる。一般論はムダだ(S商会の例で、当社システムでカスタマイズ対応するとか、これを機にS商会情報を自社で積極活用するとか)。
(2)攻め方の組み立て(あくまでも、ロジカルに組み立てる)
- まず、結論を簡潔にまとめる(S商会の例では、「S商会で取引先との情報交換をすべてオンライン化することになり、協力依頼が来ています。当社もそれを機会にメリットを出しますので、100万円ほどの投資をさせて下さい」)。
- その後にすかさず、背景や理由を要領よく述べる(S商会の例では、「本件のポイントは3点あります。1つは、S商会は自動倉庫の導入も行い、総合IT化に取り組みます。当社もこれを機会に、顧客最大手のS商会の情報利用を徹底して計画します。2つには、カスタマイズ対応をして費用を抑え、……」)。
4、説明は歯切れよく
言葉遣い・語尾などハッキリと。これは、ささいなことのようだが、相手に好感と信頼感を持たせる効果があることを忘れてはならない。
著者プロフィール
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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