Eさんも「手持ちの仕事でいっぱいで、そんな余裕ありませんよ」と言う。「忙しい」ということを言い訳にする人をよく見かける。しかし、考えてみてほしい。忙しいのはあなただけだろうか。自分だけではなく、周りの人もみんな忙しいのである。自分だけが特別だと思い、そこから出られないのである。一方で、「自分には能力がない」というのもひとつの思考の枠である。やったことなく、未知のことができたときにこそ大きく成長するのである。自分でその成長の可能性を閉じてしまっている。
思考の枠にとらわれている人に共通していることがある。それは、自分のことばかり話す傾向があるということである。何かあると、自分のことや言い訳を並べ立て、人の話を聞こうとしない。これでは成長しないはずである。
女性は思考の枠が厚い人が多い
女性についていうと、案外思考の枠が厚い人が多い。完璧にやらないといけないと考えがちな人も多いのかもしれない。
FacebookのCOO(最高執行責任者)のシェリル・サンドバーグ氏が記した「Lean In」という書籍を読む機会があった。賛否両論言われているが、いろいろと気づかされることがあった。女だからと自分に呪縛をかけている人が多いと彼女は言う。何でも自分でやらないといけない、きっちりやらないといけないと思ってしまう人も多い。ただ、すべてを完璧にやるのは不可能だし、なんでもしっかりこなさなければいけないという思考から解き放たれるべきだという。人に任せ、助けを求めて構わない。人が動きやすくするような環境を作ればいいのである。
私が感じるのは、女性は過剰な期待にこたえよう、お手本、ロールモデルになるべきという固定観念を捨てていいのではないかと思う。もっと肩の力を抜いていい。ほっとしたり、リラックスしたりする時間を持つことも、思考の枠を外す一助となる。
私はというと、自分でいうのもなんだか、人に多くのことを任せている。それは、ひとつには自分でやるのは非効率だと考えているからである。枠組み、進むべきレールができたら任せるようにしている。私はどちらかというと、0から1をつくるのが得意で、できたもの、1になったものを大きくするのは人に任せたいと考えている。長年の経験を通して自分の強み・弱みを知り、このようなスタイルに至った。自分なりの基準を持つことが必要だと思う。
今は世の中の変化が凄まじい。完璧であるべきという概念をはずし、目的を明確にして、まずは少しずつ始めてみる。目的が明確なら、時に戦略を変えてもいいし、うまくいかないと感じたら、やめたり、撤退したりしてもいいのである。
思考の枠を緩めて、まずは一歩を踏み出す―― ぜひ実践してみてほしい。
著者プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。「ビジネスマンの悩み相談室」は電子書籍でも配信中。「自分は頑張っていると主張する部下に悩む上司」「ぬるい部下に悩む上司」「若い人には横から目線で共感する」(各250円)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 人と組織は育て合う
- 人間としての金メダルを目指せ
- チームに貢献するメンバーを育てる
- 決めつけは百害あって一利なし
- 怒りは百害あって一利なし
- 若い人には横から目線で共感する
- 真のプロフェッショナルとは
- 3月はフォローアップの時期
- 資格を取るなら目的を明確にせよ
- やめることから始めよう
- 真摯さとまじめさがすべての土台
- 「忙しい」では仕事はしていない
- 問題がないという部下が問題
- ロールモデルがいない
- 実務をして部下から仕事を奪う上司
- 結果の出ない部下をどうするか
- ぬるい部下に悩む上司その3
- ぬるい部下に悩む上司その2
- ぬるい部下に悩む上司
- いつでもいい人でいようとする上司
- 過去のことを「なぜ」と問い続ける上司
- 失敗した部下を激しく叱責する上司
- 部下にレッテルをはる上司
- 自分はがんばっていると主張する部下に悩む上司
- ネガティブな思考をする部下に悩む上司
- 営業成績が上がらない部下に悩む上司
- 「数字」や「データ」がすべてだと思う部下に悩む上司