誰でもできる聞く力、パワーアップ作戦――最初の一言のセオリー:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
「話上手に売れる営業なし」といわれるゆえんは営業は聞くことの方が重要だから。顧客の求めていることに耳を傾けないで売れる時代は終わった。ただ、聞くことの重要性は理解しているものの、実際にどうすれば聞く力が向上するのか。
誰でもできる聞く力、パワーアップ作戦――最初の一言のセオリー
さらに具体的な聞く力のパワーアップ方法を3つ紹介します。
仕事上のコミュニケーションというのは、大事な話になればなるほど、本論から入ることなどほとんどなくて、相手が社内の人間でも社外の人間でもだいたい雑談から入るのが自然な流れといえるでしょう。
しかし、最近ではこの雑談が苦手という人も増えていますので、ここをクリアするとその後のコミュニケーションが友好的に進む、最初の一言のセオリーを3つ紹介したいと思います。
1つめは最も効果的な「相手が喜ぶ話題を振る」ことです。
どんな話嫌い、人づきあいが苦手な相手であっても自分が喜ぶ話題を振られれば、スイートスポットに命中したのですから、その人としては最大限のレスポンスで応じるしかありません。
例えば、相手がマカロニ柄のネクタイをしているとしたら、「部長、失礼ですけど、よく見たら部長のネクタイの柄、マカロニなんですね。ファッション誌でさりげないオシャレなんて特集がありますけど、まさにそんな感じですね」といった話題の提供方法です。ただ、相手そのものや相手の身に着けているものを褒めるのは難易度が高いので、相手の会社のヒット商品や会社の業績、受付や従業員の態度、新聞記事などメディア記事の話題から入るといいでしょう。
2つめは「素朴な疑問を投げかける」ことです。
この質問は「素朴な」というところがミソですので、本当にちょっと気になるところを質問すればいいのです。
例えば、初めて会う人であれば、名刺交換した時の名刺の情報を用いて、会社のロゴマークや社名の由来であるとかを尋ねる手もありますし、相手の苗字が珍しければ、お父さんやお祖父さんの出身地を尋ねる手もあります。出身地は地方、都道府県レベルであればプライバシー情報にはあたりませんし、相手も聞かれることが多いでしょうから、よくある話題といっていいでしょう。
あるいは、その会社のヒット商品、話題の商品、新商品開発のきっかけや直近の新聞記事や雑誌の記事も素朴な疑問の絶好のネタになります。また、本論に入った時に大きなヒントなる情報を得られることもしばしばです。本当の要件に入った時には入手したくてもできない情報が、雑談では簡単に入手できてしまったりすることも少なくありません。また、創業者や役員クラスの人には創業のエピソードを聞くのもいいでしょう。
3つめのセオリーは「共通の話題を振る」という聞き方になります。
「いよいよ朝晩寒くなりましたね」、といった天気や天候の話題は雑談の定番としてもっとも多用されるもので、これが世界最大公約数的な話題ということになるでしょう。
共通の話題というのは本当に共通であれば何でもいいのです。
相手の携帯のストラップ、ノートの種類、手のマメやタコ、背丈や方言から共有の話題を探る手もありますし、正直、共通の敵の話題は盛り上がります。共通の敵というのは、例えば監督官庁の融通の利かなさであったり、規格を主導している業界団体や、消費財メーカーから見ると無理な要求をする流通大手だったりします。
ただし、共通の敵の話が盛り上がるものの悪口や中傷にもなりやすいので、かならずポジティブな要素を入れたり、ポジティブな方向性で締めくくるような配慮を忘れないようにしましょう。
確かに何を聞いても、話しても「ええ、まあ」とか「特に(何も)……」とか一言しか返ってこない無口というか、レスポンスが鈍いという人に遭遇することもあります。
ところが、何かをきっかけにしてその人が自分同様「サッカー好き」だと分かったり、「オーディオマニア」だと判明した直後から十年来の友のように打ち解けた関係になることもしばしばですから人間関係というものは捨てたものではありません。苦手意識を持つ前に、共有の話題を探し続けるべきです。前任者や共通の知人などからあらかじめ、人となりや趣味や出身地などの基本情報を聞いておいて、準備しておいて「野球好き」「サッカー好き」「映画マニア」「タイガースファン」「北海道出身」「腰痛持ち」といった共通の話題を振る手もあります。
さあ、今日から聞き上手になってみませんか。
著者プロフィール:大塚 寿
1962年、群馬県生まれ。株式会社リクルートを経て、アメリカ国際経営大学院(サンダーバード校)でMBAを取得。現在、現場の取材を重ねた上で事務局と一緒に作り上げるオーダーメードの営業研修、マネジメント研修を展開するエマメイコーポレーション代表取締役。
著書に累計25万部のベストセラー「40代を後悔しない50のリスト」「30代を後悔しない50のリスト」「ビジネスパーソンのための結婚を後悔しない50のリスト」(以上ダイヤモンド社)、「1万人の体験から学んだ聞く技術」(PHP研究所)、「9割の人ができるのに、やっていない仕事のコツ」(三笠書房)などがある。
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