「小さくても大きなことができる時代の到来」――究極的にスリムな組織のためのヒント:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
大きいに越したことはないが常識だった会社組織だが、さまざまな環境変化を背景として小さいことが強みになる新しい組織形態が可能になってきている。画一的に低コストの製品を大量に生産するための「20世紀型組織」を見直してみてほしい。
単なるフリーランスとどこが違うのか?
ここまで読まれた方は、結局これはいまも一部の職種で存在している「フリーランス」の働き方と同じと思われたかも知れません。それは半分は正しい理解ですが、残りの半分は異なります。Go it alone起業というのは事業内容そのもの、つまり新しい付加価値そのものを生み出すということがそれに加わるのです。事業や労働に関して、howのレベルで「個人で」行きていくのがフリーランスだとすれば、howに加えてwhatも個人や少人数でやってしまおうというのがGo it alone起業のスタイルです。
これは具体的にどういう影響があるかと言えば、フリーランスというのは基本的に大元のニーズや仕事は誰か(発注主)が生み出した上でそれを受けるというスタイルですから、いわば「仕事の電話(メール)を待っている」という形になりますから、基本的には受身で、好不況の波を自らコントロールすることが非常に難しくなります。
これに対してGo it alone起業はあくまでも事業そのものを自らの強みで創出していくという形ですので、より能動的になり、不況にも強く、そうした折りにも自ら動くことができます。
小さくても大きいことをねらう
そして、Go it alone起業の最後の3番目の特徴が、小さいからといって目標も小さいわけではないということです。自らの強みを徹底的に追求してそれを磨く一方で、他の機能は徹底的に外部にアウトソースすることで、外部の専門家の能力を活用してビジネスにレバレッジをかけて(「てこの原理」で大きくして)、自分たちだけでは実現できないレベルの質と量の仕事を実現するというのが目指す姿であるところが、単なる個人事業や上記のフリーランスとの違いということになります。
こうした考え方は大企業の世界でも生産委託や販売委託といった水平分業モデルや、製品開発を他社とのコラボレーションで実施するオープンイノベーションの考え方と基本的に同一と考えられます。その考え方が「個人」にも適用可能だと考えれば、このような動きも十分に理解できます。
創造性や生きがいのための新しい働き方や組織のあり方が求められている時代に、"Go it alone起業"は一考すべきビジネスのあり方と言えるでしょう。
著者プロフィール:細谷功(ほそや いさお)
ビジネスコンサルタント。
1964年神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ等の米仏日系コンサルティング会社にてコンサルティングに従事。専門領域は、製品開発や営業等の戦略策定や業務/IT改革。併せて問題解決や思考力に関する講演やセミナーの企業や各種団体、大学等に対して国内外で多数実施。著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)等。最新刊は『会社の老化は止められない?未来を開くための組織不可逆論』(亜紀書房)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 誰でもできる聞く力、パワーアップ作戦――最初の一言のセオリー
- 「ここ一番」に強い人は「相手の脳ミソ」で考えている
- 企業で働くにも「起業家」のように働くことが必要な時代
- 遊んでいても結果を出す人 真面目にやっても結果の出ない人
- 習慣づくりに必要なのは「具体化」と「行動のコントロール」
- 独自の強み「キラーコンテンツ」の作り方
- 2014年の新興国経済と日本経済を俯瞰して予想する
- あなたもついている!? ビジネスシーン3つの嘘
- 仕事を楽にし、戦略的に人生を生きるためのセルフマネジメント
- 性格がよくなるメールの書き方
- 憲法改正は、本質を踏まえた「乗り降り自由」の議論が必要
- 実力は後からついてくる。まずは、自己PR力で理想の自分を売り込め!
- アベノミクスによる金融緩和は国民の9割を不幸にする
- 声を変えれば、うまく話せる!――「声」の認知的不協和を解消せよ!!
- 「吉田松陰」から学ぶ「明治維新をつくったリーダーシップ術」
- 極端な「自前主義」が会社を壊す――「何をやるか」ではなく「誰とやるか」で物事は決まる!
- 「会社の老化は止められない」――組織の宿命をどう乗り越えるか?
- 負けない仕事術のススメ
- セミナーで、600万円以上をドブに捨てた経験から学んだ部下マネジメント
- ドラッカー教授の言葉を実践する。一言を実践する。
- 女性を活用できる上司になる
- 忙しい経営者が、時間の余裕を作るための「ちょっとしたヒント」
- あなたはこの人生で「お金」を選びますか、それとも「生きがい」を求めますか?
- アベノミクスは歴史の教訓から何も学んでいない
- 仕事の悩みはコミュニケーションから
- 「マネジャーは“戦略力”で勝負!」こうすれば立案・実践できる
- 2分でわかる! ビジネス名著100冊のエッセンス
- 「おしい!広島県」の作り方――戦略的広報とは何か?
- 「学習という快感」を刺激せよ! ――伝わるコミュニケーションの方法論
- リーダーならもっと数字で考えなきゃ! ――51のフレーズで学ぶマネジメントの鉄則
- 現場のマネジャーに贈る! 行動科学マネジメントの教科書
- パーソナル・リーダーシップで仕事を進めろ! 〜9つのビジネス筋トレ
- 成功のトリセツ
- 求められるセルフマネジメント! 挫けない行動がリーダーを強くする
- リーダーシップ3.0――カリスマから支援者へ
- トラブルを防ぐ! パート・アルバイト雇用の法律Q&A
- お金のお片づけで今年はスッキリ「毎日○×チェックするだけ なぜかお金が貯まる手帳術」
- 仕事の生産性を高めるエクセル&ワード術
- 「豆と油で生まれ変わる! からだキレイダイエット」は哲学的な本なのである
- 急増する管理職になれない40代
- 不況をチャンスに変える! 「儲け」を生み出す「すごい仕掛け」とは
- 日進月歩のIT――どこまで知っておくべきか
- 経営者たるもの、経済の流れを正しく認識すると同時に、家電メーカーの失敗に大いに学ぶ必要がある
- 今の時代に求められる、リーダーに必要なメンタリティ
- 営業マンは疑う事を覚えなさい
- 悪用厳禁! マグロ船の船長が、船員に命がけの仕事をさせる秘伝の技術
- 入社10年目の羅針盤
- 仕事で悩むのは当然。でも考え方ひとつで「スッキリ仕事術」