ビジネスパーソンのための英語は「どう話すか」ではなく「何を話すか」:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
英語力は上げたいが時間はない。このジレンマを打破するにはゴールを明確にし、かっこよさではなく「そこそこ」を目指す。そして訳すためではなく「話すための」文法を学ぶ。
(2)英語の核となる「話すための」文法を学ぶ by 泰斗
ビジネスパーソンの英語にどうしても欠かすことができないのは、「話す」能力です。なるべく効率よく苦もなく話すことのできる能力を身につけたい、それが切なる希望のはずです。ただそれを実現するためには……逆に……今までなぜ英語が話せなかったのかについて、よく考えてみる必要があるでしょう。
ビジネスパーソンは多くの場合、受験やTOEICなど資格試験の勉強を通じ十分な英語知識をすでに蓄えています。英文の構成についての該博な知識、外国人としては驚くばかりの単語力。それでもなお話せないとしたなら、そこには大きな欠落があるはずなのです……それは何か。
それは英語というシステムについての理解不足です。英語ということばがどういったことばであるのか、そもそもどういった「エンジン」が文を生み出すのか。英語の「動き方」についての本質的な理解が欠けているのです。「いや、英文法は高校でキチンと学んだのだが」そう反論されるかもしれません。それは事実です。
皆さんが学んできた学校文法は「英語を訳せればいい」を目的にしたもの。けっして「話すこと」を目的にはしてはいません。みなさんの頭の中には、「It……to〜構文」「to不定詞の3つの用法」などさまざまな断片的知識が獏として転がったまま。知識が「話すために」有効に稼働していないのです。
こうした現状を鑑みれば、ビジネスパーソンの英語学習初日にやるべきことが見えてきます。それは本棚で埃をかぶった文法書を取り出して読むことではありません。
英語のシステムそのものを理解すること。
英語で文を紡ぎ出す、意識を持つこと。
英語のコアに位置し、多くの文法事項を生み出すエンジンについての理解を進めること。それができて初めて、みなさんの知識は「話す」に向けて積極的に動きだすことができるのです。
本書で私が担当したのは「文法」。目標としたのは通例の文法書の向こうにあるシステムを描き出すことです。
例えば、英語が「配置のことば」であることを知っていましたか? 英語は、文内の位置によってその意味が決まります。4つの基本文型と2つの修飾方向さえわかれば、ある程度自由に使えるものなのです。
通常の受験英語を経て今に至ったビジネスパーソンなら、ここで描かれた英語のコアを知るだけで、今まで蓄えた知識を有機的に整理し、「話す」に向け臨戦態勢を整えることができるでしょう。そして、その道程で英語のもつ劇的にシンプルな本質に気づき、英語征服に欠かせない勇気を得ることができるでしょう。
英語は外国語。山は高い。盲目的に努力を重ねてもなかなか上ることはできません。ですが、本書であきらかにしたアプローチを使えば、もっとも効率的に頂上を手にすることができるでしょう。努力には取るべき順番と手法があるのです。本書を手にしたすべての方々が、目標とする英語力を手にされることを願ってやみません。
著者プロフィール:大西泰斗(おおにし ひろと)
東洋学園大学教授。筑波大学大学院、オックスフォード大学言語研究所客員研究員を経て現職。Eテレ『しごとの基礎英語』の講師としてテレビでも活躍中。明るいキャラクターと気持ちに焦点を当てたわかりやすい解説で人気。著書に、『ビジネスパーソンの英語』(日本実業出版社)『一億人の英文法』(ナガセ)『これで話せる! 英語のバイエル初級』『英文法をこわす』(以上、NHK出版)、『大西泰斗のイメージ英文法』(DHC)、『ネイティブスピーカーの英文法』『ネイティブスピーカーの前置詞』(研究社)などがある。
著者プロフィール:大西徳昭(おおにし なるあき)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業。米国エモリー大学経営大学院卒(MBA取得)。現在、日本郵船株式会社 フェアトレード推進グループ グループ長として国際法務案件担当。豪州現地法人経営職(CEO)等国際プロジェクトを多数経験し、仕事で英語を使う難しさと面白さを身をもって体験する。
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