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優れたリーダーに必要な対話術ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

昔は上意下達式で部下に命令を下していたが、今は部下も決定を納得しなければ面従腹背になってしまう。部下のやる気を引き出して、組織を活性化するには対話力を身につけてほしい。

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対話力とディベート力、会話力とは別物

 他の多くの人間の能力と同じように、人によって対話力には大きな違いがある。対話力を伸ばすため、身に付けるためには、やはり心がけて磨くことが重要なのである。

 そのためには、まず「対話とは何か」を知って、その方法を学ぶ必要がある。簡単に言えば、対話とは、考え方や価値観・世界観の違う人とも話し合って、お互いの理解を深め、考えることであり、それによってともに自分の考え方を深め、人格的発展や成功をもたらすことができるのである。

 グローバル化の時代の中で対話力の必要に気づく人は多くなってきている。でも、その中には、しばしばディベートを学んだり、会話術を身に付けたりすれば、対話がうまくなると思っている人がいる。実は、これは必ずしも正しくはない。対話は、ディベートとは同じではないから、ディベートの力を磨いても対話力が必ずしも身につくわけではなく、むしろ対話力が減ってしまうことすらあるのである。これでは、仕事の成功はもたらされないだろう。

 また、対話は会話や、まして雑談とは違うものと考えた方がいい。会話力や雑談力を身に付けても、必ずしも対話力にはつながらないのである。

対話術を身に付けるために

 「対話力」は、次のような力からなる。

  • 聴く力・傾聴する力
  • 思考する力・応答する力
  • 話す力・語る力
  • 振り返る力

 これらの力を身に付けるための方法が対話術である。『人生も仕事も変える「対話力」』では、これについて具体的に説明し、これらの力を身に付けるための簡単なトレーニング方法も説明した。これらを頭に入れて実際に行えば、対話力は伸びていくのである。

 このような対話についての考え方は、この本の最終章で書いたように、ソクラテス以来の「対話の哲学」に立脚しており、サンデルらの政治哲学とも深く関連している。このような思想的基礎が存在するところが、単なる対話や会話についてのノウハウ本とは違うところである。多くの方々が対話力を身に付けて、優れたリーダーとなっていくことを祈りたい。

著者プロフィール:小林正弥(こばやし まさや)

千葉大学大学院人文社会科学研究科教授、慶応義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授、日本ポジティブサイコロジー医学会理事。

1963年生まれ。東京大学法学部助手を経て、2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。

1995〜97年、ケンブリッジ大学社会政治学部客員研究員。公共哲学・コミュニタリアニズムの研究を通じ、ハーバード大学のマイケル・サンデル氏と交流をもち、NHK教育テレビ「ハーバード白熱教室」で解説者を務める。

著書に『サンデルの政治哲学…<正義>とは何か』(平凡社新書)、『対話型講義原発と正義』(光文社新書)ほか多数。


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