仕事を「振る or 振られる立場」を巧みに使い分ける:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
無茶ぶりを巧みに駆使することで仕事の幅が広がる、振られた人も得をする。仕事がドンドンと振られたときにいかにさばくか。無茶振り能力で仕事の仕方を変える。
「社長、お客さま感謝のパーティーに出席いただきたく、日程の調整を……」
「分かった。では秘書にスケジュールを確認して、開催日を固めてくれ」
「ありがとうございます。できれば、オープニングでご挨拶をいただきたく……」
「ああ、もちろん。挨拶の文案は営業担当役員のC君と練ってくれないか」
「承知しました。ではCさんにもその旨、お伝えして相談いたします」
営業部長から社長、社長から役員に仕事が振られました。このように仕事は「振って、振られて」を繰り返し、イベントのプランが進行していくのが分かります。仕事というものは、そのほとんどが「発注と受注」という流れの中で生まれます。この「受発注」の流れは、会社の中だけでなく、例えば顧客や取引先、株主などの利害関係者との間でも存在し、連綿とつながっています。
スポーツ界、芸能界に限らず、ビジネスの世界でも「仕事を干される」という表現はよく使われます。説明するまでもなく、「干される」というのは仕事を「発注」してもらえない状況です。
「自分は、仕事を振られてばかりだ。つまらない」
と嘆く人をよく見かけますが、働く機会を与えられるということは、それだけ頼りにされているということ、チャンスを与えられているということです。働く人間にとって、最も恐れなければいけない状況、それは業種や職種、階層にまったく関係なく、「仕事を干される」ことです。独立開業している人であれば、身にしみて理解できます。つまり、仕事は「振られてなんぼ」なのです。
自分が振った仕事が戻ってくる、あるいは互いに振り合うこともあります。また、隣同士でシェアするケースも見られます。例えば、同じ職場の中で、専門家同士が2人で1つの仕事を分け合ってやる。あるいは、「手が足りないからここだけ手伝って」という場合もあります。先ほどの部長と社長の例を見るまでもなく、働いている人は誰もが、あるときは振る立場に、あるときは振られる立場になるのが普通です。会社組織においては、たいていの仕事は何人かでチームを組んで行なう「プロジェクト」であり、振る立場の人間は「プロジェクトリーダー」となります。プロジェクトリーダーは上司とは限りません。その仕事における責任者であり、自分で仕事を分解して各人に分け与えていく立場です。
大きな仕事に複数の人間で取り組む場合は、このプロジェクトリーダーという役割が必要不可欠となります。一方で、このリーダーが今度は別のプロジェクトのメンバーになり、そのリーダーから仕事を振られることもあります。つまり仕事というのは、振る人と振られる人が明確に分けられているわけではなく、同じ人間が振ったり振られたりしながら成り立っているのです。上司から振られた仕事の一部を、部下に振る、ある仕事のかたまりを分解して人に渡したり、自分でやったりする……。それを繰り返すことが組織の中では常に行なわれているのです。
会社にいれば振る立場と振られる立場が常に存在し、振るだけ、振られるだけの人はいません。「振って、振られて」を繰り返していく中で、「振り上手」や「振られ上手」になっていく。こうして1人の人間がさまざまな仕事を体験するのが個人としても、また組織としても理想的だと言えます。
著者プロフィール:高城 幸司
同志社大学卒業後、リクルート入社。営業職として記録的なトップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、日本初の独立/起業の情報誌アントレの立ち上げに関わる。現在は、人事コンサルティング会社を経営。企業に対する人材育成、人事戦略の策定などを行っている。
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